第三章 第91話 アウレリィナの記憶 ―1―
私は、初めから反対していたのだ。
あまりに危険すぎる、と。
人の身で、そんな
いくら
仮に成功したとて、無事で済む
しかし、ユーゴ様は聞き入れてくださらない。
もちろんその
何しろ、
――
※※※
その人は突然、現れた。
何もない
◇
私の名は、アウレリィナ・アルヴェール・ヴァルクス。
父は、エメルシル・ベリア・ヴァルクス。
エレディール北西部の中核都市オーゼリアに
オーゼリアは、ここら一帯の大領主である
その
ヴァルクス家は、少々特別な
そのことは、幼いころから徹底的に教え込まれる。
我が家の
貴族でなくても、自分の家がより富み、
しかし、その支えるべき
我が家は……禁足地を代々見守る貴族なのだ。
◇
今から
そんな家に生まれた私は
私の
当時、イルエス家の
彼の
オーゼリアから
イルエス家の驚くべき出自、それからの長い長い歴史、担っている役目。
そして――――
――
◇
その時私は、初めて「
時刻は何と、
通常ならば、
このような時間帯に呼ばれた理由は分からなかったが、きっと何か
曰く、それらを三つ全て揃え、備えたものは「
御屋形様は、少し大ぶりの
それは
深い深い
これが、
あまりの
「これが『
「これが……でしょうか?」
「ああ」
御屋形様は、私の
「
◇
そしてそのまま、私は
グリンデア様はもちろんご存知のはずだが、まるで初めて目にしたかのように
「御屋形様、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか」
「何だい? エリィナ」
「
「
◇
「『
「そうだ」
御屋形様はある一冊の
それは多少古ぼけてはいるが、
「ただし、これは厳密には
「写本……」
「グリンデアよ」
「はい」
「お前も
「分かっております、
「エリィナよ」
「はい」
御屋形様は、今度は私の方に向き直って私の名を呼んだ。
重々しい声だった。
「この『遠見の書』にはな、
「未来の……まさか、
「そうだな。我がイルエス家の当主は、
「な、何と……」
私は言葉を失った。
イルエス家が数ある
それに、そのようなことを
そんな私の
御屋形様は、軽く口の
「さあ、二人とも
そう言ってご自身も五歩ほど下がると、そのまま目を
訳も分からず、それでも素直に言葉に従って、グリンデア様も私も同じように机から同じだけの距離を取った。
そのまま
「今、だ」
「え……?」
「たった今、『
「…………は?」
まさか、あの「すれ違い」が、今?
思わず私は、御屋形様のお顔を見た。
しかし御屋形様は瞳を閉じたまま、執務机を指さす。
すると――!
机のある
その中心に小さな光が現れたかと思うと、それは
思わず私は、目を
しかし何が起きているのかをどうしてもこの目で確かめたい、その一心で手をかざし、指の
――そう、その人は突然、現れたのだ。
何もない
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