第三章 第90話 二者会談 ―2―
「私に、会いにいらした……のですか?」
「ええ」
エリィナさんの言葉に、何気ないように返事をする
彼女の様子に、少しだけ眉を
「どういったご用件なのかはこれからうかがいますが、その前にまず、なぜ私がここ『
「調べていたからですよ。ヴァルクス家に限らず、禁足地に関わりのある
「なるほど……」
「更にお話を進める前に、確認してもよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
巫女様は軽く首を回して、この場にいる人物の顔を見た。
リィナから始まって、私こと
エリィナさんによると本当はもう一人男性がいるらしいんだけど、怪我をしているとかで別室で休んでいるそうだ。
そうそう。
私たちの会話は、例によってエレディール共通語と日本語を使い分けながら進んでいると
「かなり突っ込んだ話になることが考えられます。ここにいるのは、聞かせても構わない
「構いません」
巫女様に問いに、エリィナさんは即答した。
それを聞いて、私は何だかちょっと嬉しい気持ちになった。
私のこともそうなんだけど、少しちっちゃい(失礼)リィナのことも変に子ども扱いしないで、ちゃんと「仲間」と見てくれているんだ。
「
「そちらの……サブリナさんもでしょうか?」
「ええ。彼女は
ここでエリィナさんは、少し身を乗り出してリィナの顔をちらりと見た。
ちなみに座席順は、扉から遠い順にエリィナさん、私、リィナだ。
「――
「未来への、投資……」
「もちろん、本人たっての希望で同行していることは明言しておきます」
……どういう意味だろう。
少し謎めいたエリィナさんの言葉を聞いて、巫女様はおうむ返しに
何だろう、アルカイックスマイルって言うのかな……私にはとても真似できそうにないし、穏やかなのに
「あなたがそのような
「ではまず、あなた方が私を訪ねたわけからお聞かせ願えますか?」
「いいでしょう」
巫女様は微笑みはそのままに、でも少し居住まいを
「単刀直入に尋ねますが――イルエス家で今、何が起きているのですか?」
「えっ……」
珍しく、エリィナさんは意表を突かれたように言葉に詰まる。
巫女様の問いかけが、そんなに想定外のものだったのだろうか。
それと――イルエス家?
さっき少しだけ話に出てきたけど、よく分からなかった。
ヴァジュ……何とか?
エリィナさんって、ヴァルクス家の人なんだよね、確か。
「アウレリィナ嬢、あなたは本来、このような
「……」
「何か事情があるだろうことは察しております。わたくしは、そのことをあなたに問うためにピケを訪れたのですよ」
「……そうでしたか。しかし
私には二人の関係性も、エリィナさんの立場のことも正直理解してないから、巫女様が
しかし彼女の問い返しに対して、巫女様は思いもかけない言葉で答えたのだ。
「そちらの山吹さんたちと……レアリウスですよ」
「……!」
「あなたがこの
思わぬところで、思わぬ人の口から私の名前が出た。
それで……え?
私たちがエレディールに転移したことと、エリィナさんに関係が、ある?
エリィナさんの顔を、ちらりと横目で見た。
でも、何か考え込んでるみたい。
巫女様もそこからは何も言わず、エリィナさんが口を
――そして、ただ静かなだけの時間が、十秒くらい
「
「いいでしょう」
巫女様は気を悪くした
私としては逆に、肩透かしって言うか、それこそ焦らされた感じ。
いいけどね……そっちも確かに気になるし。
「そちらも
「え、ええ……」
「わたくしはこの件について、先日
「合意、とは?」
「『レアリウスを
「何と……」
ちょっと待ってほしい。
ヴァルクス家に連ならない私には、分からないことばかりだ。
レアリウスが日本人にって話は、
でも、エルカレンガ? ミラン・イース?
何か日本の車の名前みたいなんだけど、絶対に関係ないよね?
「あ、あの……すみません」
私は
そして、分からない言葉についての説明を求めた。
巫女様が一つひとつ、丁寧に解説を始めてくれる。
その
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