第三章 第84話 刃物
「おわっ!?」
「おっと!」
襲いかかるヴァーングルドとセラピアーラに、改めて構えを取ろうとした
完全に無防備になった二人に、しかしヴァーングルドたち――レアリウスの「
「わははは! まあ確かに話には聞いてたけどさー、
人形たちの態度に違和感を覚えつつ、聖斗と朝陽は素早く立ち上がる。
「聖斗、あいつ、何だって?」
「戦いの基本が分からない、
「じゃ、今のこれはやっぱり
朝陽はつま先をトントンしながら、先ほど足首をがっしりと固定されたような感覚の原因について結論を出す。
聖斗も足をぶるぶると振って、
「教えといてやるぜ。戦う時にはなー、こういう
何故か戦闘方法について
「まあ、動き回られると全然縛れないから、
しかし、正確には分からなくとも、朝陽は
「何だか僕たち、舐められてる?」
「ははっ、そうみてえだな。でも実際、こいつはヤベーぜ……」
その道の英才教育を受けている朝陽はともかく、聖斗は空手の鍛錬をしているとは言え、それが実戦でどれほど役に立つものかまるで未知数である。
師匠である
聖斗の額を、汗がひと
その時――――
「やめろ! やめるんだ!」
二組の
蓮司は聖斗たちを背に、ヴァーングルドとセラピアーラ、そして後ろの
「鏡さん!」
蓮司は鬼の
「あんた、子どもたちに何させてんだ!」
「何、とは?」
「この状況で
聖斗の
澪羽が真白の元に駆け寄る。
「黒瀬さんに何をしたんだ!」
「何、とは?」
まったく同じ調子で問い返す龍之介。
彼の代わりと言うわけではないが、朝陽が答えた。
「瓜生先生。あいつら、黒瀬先生を
「何だって!?」
「僕、黒瀬先生の感じた恐怖を
「そ、そうなのか。それで、壬生さんは?」
朝陽は、天幕のある方を
「その
「寝かせ……そ、そうか」
その
それはエーヴァウートに伝わり、ヴァーングルドとセラピアーラは構えを解いた。
「正気じゃないな、鏡さん」
「いいや、私は正気だとも。これ以上ないほどにな、瓜生さん」
「こんな強引な手に出るなんて……そもそも例のものについては、今日の正午が期限だったはずだ。なぜこんなことを!?」
「状況が変わったんだよ。それにだ、こうなったのは君たちにだって責任はあるということに自覚はあるのかな? 瓜生さん」
「僕たちの、責任だと?」
蓮司は、彼らを凶行に走らせた原因にすぐには思い当たらない。
やれやれと肩を
「
「大事な、こと?」
「猿芝居はもういい。職員室の
「――――!!」
驚愕の表情を浮かべる蓮司。
それを見て、龍之介は薄笑いを浮かべた。
「だがな、もうそれもどうでもよくなったのだよ。何しろ――プラン
「プラン、C?」
「そうだ。これ以上宝探しごっこに興じる暇はない。君たちを根こそぎ
「……」
「どうだ、分かったかね。君と黒瀬さんがもっと素直だったら、このような事態に至らなかったということが」
「それは、
強い口調で、蓮司は言い返す。
しかし、強烈な焦燥感が彼を
龍之介たちが完全な実力行使に出る前に、もっと綿密に手を打つべきだった。
得体の知れない――恐らくはザハドの人たちだろうが――連中を引っ張り込んでまで、彼らは目的を達成しようとしている、と。
「安心したまえ、瓜生さん。当然、君も追放対象だ。仲良く地獄へ送られるがいい」
「地獄? どういうことだ?」
「さあ、私もよく知らん。どのみち、嫌でも理解することになるのではないかな――純一さん、
「分かりました」
そして再び、ヴァーングルドとセラピアーラが構えた。
その様子を見て、蓮司は何か
それは――彼愛用のサバイバルナイフだった。
転移してきてから、蓮司はベルトに
「おいおい、
「
「へいへい、そんじゃ、この
セラピアーラは返事をせず、ただ朝陽に向かって視線を固定した。
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