第三章 第53話 狂信者と白き智者
――
単一国家エレディールにおける、最大規模の
頂点には、神々との対話を司ると言われる
これは、教義の中心である「いつか
望星教会は
そう――――
◇◇◇
リューグラムが客間を出ると、すぐに
大声で話す複数の人の
(
リューグラムは心の中で舌打ちをする。
基本的に
現時点で彼らに責を問うのは酷と言うものだろう。
(分かっているさ)
彼の後ろでは、
トライヴァルトが
それを聞きながら、指示が遅いのではないかと八つ当たりしたくなる気持ちをリューグラムは再び抑える。
(落ち着くのだ……)
そろそろ
思っていた通りの出で立ちの集団だった。
足早に向かってくるリューグラムたちの姿を確認した男は、彼らをそれ以上中へ入れまいと頑張っている使用人たちの頭越しに、大声で呼びかけた。
「おお! やっと領主殿のお出ましか!」
声の
さらに、もう少し小柄だが同じような恰好をした者が、彼の後ろに二人立つ。
そして、大男の横にいるのは、わざわざ対照性を際立たせようとするかのように
身につけているのは真っ白な
キリスト教のアルバのような、ゆったりとした
胸には、望星教会の紋章が輝いている。
「お前たちは持ち場に戻ってよい。ご苦労だった」
リューグラムは大男に返事をせず、まず使用人たちに声を掛けた。
彼らはあからさまにほっとした表情で、
「それで」
リューグラムは凍りつくような視線を、目の前の大男たちに向けた。
「一体、この
不満と抗議を凝縮して固めたような言葉に全く
「
合わせたように、大男と後ろの男たちも頭を下げる。
しかし、場の空気は一向に和らぐ様子を見せない。
「
涼し気な声で自己紹介した男は、そう言って大男を手で差し示す。
「
今度は頭を下げるのではなく、右手を胸に当てて
リューグラムは視線を長身の男に移して言った。
「自己紹介痛み入る。が、あなた方のことは存じているよ。
数瞬の
「――
ヴァイクライトの目に
「我が
全くありがたくなさそうな
「それで、このような横紙破りをしてまでいらっしゃるとは、
「
ノストレームは静かに微笑みながら応じた。
リューグラムが隠そうともしない
「先般、ピケ市中にて乱闘騒ぎが起きたことはご存知でいらっしゃいますね?」
「もちろん」
「その件について、気になる
「……噂?」
「ええ」
ひとつ、小さく咳払いをしてから、ノストレームは続けた。
「当事者の一方が――――レアリウスの手の者だった、と」
「レアリウス、だと?」
そんなことは百も承知……と言う心の声をおくびにも出さずに、真顔で首を捻ってみせるリューグラム。
ノストレームの目がすっと
「領主様におかれては、ご存知ないと?」
「もちろん調べているが、今のところそのような情報は出てきておらぬ」
「……そうですか」
切り込むようなノストレームの視線を正面から受け止めて、リューグラムは表情筋のひと
探るように領主の顔を見つめていたノストレームは、何を思ったのか急に辺りをきょろきょろと眺め始めた。
「何か気になることでもおありかな? ノストレーム殿」
「ええ、時に領主様」
「何だ」
瞳を屋敷の奥に向けたまま、ノストレームが言った。
「……
「……何?」
ノストレームは、視線を再びリューグラムに定めた。
「こちらの家宰であるカルヴァレスト殿は、今いらっしゃらないのですか?」
「……そうだ。今は所用で出ている」
「……そうでしたか」
口角を小さく上げながら、ノストレームは続けた。
「実は……もうひとつ、別の噂を耳にしておりましてね」
「……別の噂、だと?」
「ええ。その、カルヴァレスト殿に関するものなのですが――――彼がレアリウスの者であると言うのは、本当のことなのでしょうか?」
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