第三章 第51話 四者会談 ―9―
「ユーゴ・フォンダン゠イルエス……」
似ている。
確かに似ているが――イルエス?
イルエスって、何だ?
「……『
リューグラムさんがぼそりと
イルエス家?
「リューグラムさん、イルエス家って何なんでしょうか」
「ん? ……ああ、
「特別、ですか」
「そうだ、八乙女さんはエレディールの
階級社会……貴族階級のことだろうか。
一応、大まかには理解しているつもりだけど。
「貴族の位階なら、名称を押さえているくらいです」
「そうか。イルエス家はだね、その
「外れた……ですか?」
「ああ。イングレイ、簡単に説明してあげてくれ」
「
カルヴァレストさんは、視線を俺に戻すと口を
「イルエス家は貴族でありますが、
「その、
「『名』と『姓』の間に置く、
「
「聖名は、その
「我が聖名はだな、戦の神ラーズがかつて連れていたと言われている、白い
何となく誇らしげに、自らの名の由来を語るリューグラムさん。
自分の名前を誇りに思えるってのは、いいことだ。
「それじゃあつまり、貴族なのに聖名を持たない特別な家が、イルエス家というわけなんですね。でもどうして、イルエス家だけ聖名がないんですか?」
すると、リューグラムさんとカルヴァレストさんが声を
「ふむ……
「王家でもないのに、『
何なに? エナ・コリノア?
七つの丘って何だ?
また新しい言葉が出てきたよ……。
いろいろと知識を得られるのはありがたいんだけど、こうも
「まあ、
「確かにもう少し聞きたい気持ちはありますが、
「すみません、
済まなそうな表情のコレット。
「じゃあ、その人に会ったことも?」
「ないです、残念ながら。って言うか私、イルエス家のある『
ヴァシャルドノヴォロア……王様の騎士って名前の領地か、都市の名か。
やっぱり行く必要がある、んだろうな。
「しかし八乙女さん。その『ユーゴ・フォンダン゠イルエス』と言う人物が、君たちをこのエレディールに転移させたと言うのは、本当なのか?」
「はい。と言っても、私自身で確かめたわけではなく、アウレリィナさんがそう話しているのを聞いただけなんですけどね」
「ふうむ……」
何やら思案顔のリューグラムさんだが……何か問題があるのだろうか?
「いや、私も
腕を組みながら話を続けるリューグラムさん。
「少なくともそんなことが出来る人間がいるとすれば、その存在が耳に入らぬわけがないのだよ。例えこのような
「はあ……」
「とは言え、
俺も、あの録音データでアウレリィナさんが口から出まかせを言っていたとはとても思えない。
それに……今、ひとつの疑問が
アウレリィナさんは、かつて校長先生と話した時、
もし、『ユーゴ・フォンダン゠イルエス』が『ほんだゆうご』だとすれば――――もしかして、彼女は彼から日本語を習っていたんじゃないだろうか。
アウレリィナさんが『ユーゴ・フォンダン゠イルエス』に仕えていたと言うのなら、その可能性は高い――いや、そうとしか考えられないだろ。
まあそうだとしても、日本人であるはずの「ほんだゆうご」がどうしてイルエス家の姓を名乗っているのか、その辺の関係性は全く分からないけどさ。
「その人物がイルエスを名乗っているのなら、ヴァルクス家と言う
「やっぱりそうですよね……」
「ただな、八乙女さん。さっきも言ったように、あなたたちを
「そこは、
合いの手を入れたカルヴァレストさんに、リューグラムさんは首を横に振る。
「『
なるほど……。
でも、それでも、俺は「ほんだゆうご」に会いたい。
会って、元の世界に戻る方法を聞き出したい。
それと……俺たちを転移させたことについて、
彼に同情できる部分は、なくもない。
でも、転移さえさせられなければ、朝霧校長が命を落とすようなことも……なかったはずなんだ。
「そういうわけで、八乙女さん。これは私からの
「やり残したこと、ですか?」
何かあったか?
「より
「ある人物、とは?」
「――――
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