第三章 第43話 四者会談 ―1―
俺と
「
そんなリューグラムさんの挨拶から、四者会談はとうとう始まったのだ。
◇
たったの六人が使うには少し広すぎる、とても
まず、いわゆるお誕生日席に領主であるリューグラムさんが座り、彼の後ろに従者
であるラーシュリウスさんが守護神のごとく立っている。
場所的にも立場的にも、リューグラムさんがホスト役ってことでいいのかな?
で、こちら側の長いソファにはまず俺、瑠奈、そしてコレットの順番だ。
コレットは最初、護衛だから俺たちの後ろに立つと言っていたのだけれど、どうやら彼女は彼女なりの立場で参加していると捉えられているらしくて、座るように勧められたのだ。
そして、俺たちの反対側のソファに、カルヴァレストさんがただ一人だけでぽつんと腰かけている……何か変な感じだよな?
一応ちゃんと紹介されたところによれば、やっぱり俺の思った通りカルヴァレストさんはここ、リューグラム家の
なお、メナールと言う言葉を
ちなみに、
リューグラムさん+ラーシュリウスさん、俺と瑠奈、コレット、そしてカルヴァレストさんと言う、四つの立場だからね。
こういうのが、日本語は面白いし難しいと思うところだな。
「さて、今日はこうして
「え?」
どういうことだ?
リューグラムさんが、俺たちに話を聞きたいと言うことで集められたのでは?
俺は思わずカルヴァレストさんを見た。
「
カルヴァレストさんは立ち上がると神妙にそう言って、深々と頭を下げた。
俺たち三人は思わず顔を見合わせてしまう。
あれこれ心構えをしてきたつもりだったけれど、何と言うか、思わぬ先制パンチを喰らってしまった気分だ。
……いやでもしかし、そう簡単にぶれるわけにもいかないよな。
俺には俺の
「顔を上げてください、カルヴァレストさん。あなたには窮地を救っていただきましたし、この会談はきっと私たちにとっても意味のあるものになるはずなんです。
「八乙女さんの言う通りだ。せっかく集まったのだから、せめて実のあるものにすべきだろう。そう言うわけで」
リューグラムさんは俺の台詞を引き取り、話し合いの推進力とした。
「イングレイ。お前が大切な話があるということなのだから、まずはそちらから聞こうじゃないか」
「
頭を上げたカルヴァレストさんは、再び席に着いた。
そして、
「まず最初に。
「なっ!!」
「ええっ!!」
おいおいおいおい、おい! おい!!
今、何て言った!?
コレットは立ち上がって何だか構えてるし、ラーシュリウスさんなんか腰の
「……イングレイよ。
「
リューグラムさんは、少なくとも表向きは冷静さを保っているみたいだけど、ひじ掛けを握っている手がすごい
「ふむ。それならとりあえず話を先に進めるがよい。マリナレスさん、お気持ちは察するがとりあえず座ってほしい。ラーシュもだ」
「……
「はっ」
たった今、特大の爆弾をぶち込んでくれたカルヴァレストさんだが、何を考えているのか、その表情からは読み取ることが出来ない。
この告白が、彼の身を危うくすることは間違いないし、当然それを分かった上で発言したんだろうけれど……何をしたいのだろうか、この人は。
「本来ならもっと早くにお話しすべきでした。しかし十年前の事件以降、状況があまりに複雑になり過ぎたことで、簡単に口に
「十年前の……例の
「はい」
カルヴァレストさんは大きく
「あの一連の
「岐路?」
「そうでございます。そしてその結果、二つに割れることになったのです」
そこで何を思ったか、カレヴァレストさんは俺たちの方を見据えて続けた。
「そして、そちらのニホンジンの
「ええっ!?」
ど、どういうことだ?
俺が命を狙われてるのって、転移の秘密がらみじゃないのか?
その秘密に、鏡先生が関わってるのを俺が知ってるからだと思ってたんだが。
「それは本当なんですか? カルヴァレストさん」
「残念ながら。ただ、遠因ですので直接的な理由ではございませんが」
「オズワルコスという男が、八乙女様の命を狙っていると私は聞いていますが……」
「マリナレス様。確かにその男は
「ちょっと待て」
突然、リューグラムさんが話に割り込んできた。
「立場が異なる面々が集まっているのだから、ある程度は仕方のないことだとは思う。だが、そもそもこの会談の目的は何なのだ? イングレイよ。このままただ話し続けていても、話題があちこち飛ぶだけで、何の結論にもたどり着けないように思えるのだが」
「仰る通りでございます、御屋形様。
「八乙女さんたちはどうなのだ? 先ほどイングレイに話し合いが意味を持つものになるはずと言っていたが、あなたたちにとって有意義になるためには、何らかの結論が必要なのではないか?」
「そうですね。確かに、私と瑠奈にはお願いしたいことがあります」
「マリナレスさんはどうなのだ? あなたがヴァルクス家の意向を受けていることは承知しているがね」
「そうですね……」
コレットは少し考えるように、
「正直に言いますと、特に何かの
「最後の命令……聞かせてもらえるのかな?」
「八乙女様と久我様をお守りして、無事に
「なるほど」
「今日、ちょっと無理言って同行させてもらったのは、もちろん
小さく
なぜこの子は、俺たちのためにここまでしてくれるのだろうか、と。
それは例の、あまりにいろいろなことが起こり過ぎて、疑心暗鬼になっている気持ちがあぶり出した疑問なのかも知れない。
それでも……俺たちを守るために文字通り命を懸けて戦い、こうして自分の任務を
……いかん、何か情緒が不安定になってるかも知れん。
俺は、
「よく分かった、
「
「私も……特に異論はないです」
カルヴァレストさんとコレットが、即座に賛意を表明した。
俺としても、無駄な話をするのは勘弁してほしいから望むところだ。
隣の瑠奈を見ると、彼女が小さく
「私もそれでいいと思います」
「それならまずは、私を含めて皆の希望することを具体的に出し合うことから始めよう。まず誰からいこうか?」
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