第三章 第13話 ディアブラントとウルティナ ―1―
「まず、彼らは恐らく
最初に
そして、次の
「その
「それは……何か確たる
「
「……」
根拠はあってもとりあえず話す気はなさそうだと感じたリューグラムは、先を続けることにした。
「彼らは
巫女の持つ神秘的な雰囲気に当てられたのか、はたまた転移者たちと関わる中で黒髪に対する違和感が薄まっていたためだろうか――
ウルティナの髪は、
そして彼女の瞳も、
実のところ、琉智名としての彼女を目にした
「? どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、
ディアブラントは気を取り直して続けた。
「
「
「容姿や名前……おお、そう言えばちょうどいいものがあります。ラーシュ」
ディアブラントが背後にいる
しばらくすると、使用人は
「これらはニホンジンたちから贈られた
そう言ってディアブラントが取り出したのは、ちょっとした厚みのある四つ切サイズの画用紙の束だった。
それは八乙女たちがディアブラントに自己紹介用に贈った、プロフィール帳だった。
そこには転移者二十三人の名前と性別、
本のように
――
男性。
十二歳。
小学六年生。
短く切りそろえられた短髪に、にかっと笑っている顔。
(この子が、
あの元気いっぱいな少女の姿が脳裏をよぎったのか、ウルティナの眼は優し気に
とりあえず、これで転移した二十三人の生存は確認できた。
この朗報を日本の人たちにすぐに知らせることはかなわないが、いつか彼らの悲しみを
ウルティナは思わず、小さく
「その
「あ、いえ。よく
「巫女殿もそう思われますか。さらに言うなら、この
「ええ、本当に」
ウルティナはプロフィール帳に
「わたくしたちの
「ええ、確かに」
「
「得ておりますよ。ヴァルクス家の
巫女は思いの
彼女――
言葉を額面通りに受け取るなら情報収集ということになるのだろうが、問題はその目的だ。
何のために彼らのことを知ろうとしているのか――ディアブラントはこの場で必ず、その理由を明らかにしようと決意している。
それ
「ヴァルクス家……それはもしかして、
「ええ、そうですよ」
ディアブラントの返答を聞いて、ウルティナは少し考えるそぶりを見せた。
ヴァルクス家がイルエス家の意を受けて、エレディール西方に目を光らせていること自体は、彼女も承知している。
しかしそれは主に「レアリウス」の動向を把握することと、禁足地の定点観測のようなものであり、アウレリィナのように目立つ人物が先頭を切って行うようなものではない。
そもそもウルティナが持つ情報では、アウレリィナは実家を離れてイルエス家に仕えているはずだった。
(イルエス家で、何かが起こっている?)
イルエス家とは、大陸中央の
ただし
現当主は、グリンデア・イルエス。
全ての貴族と、
このことからも、イルエス家の
(そう遠くないうちに、訪れる必要がある……)
ウルティナは決意した。
しかし、まずはレアリウスだ。
それに……目の前の辛抱強い
「リューグラム弾爵、情報提供に感謝いたします」
「おや、私どもが『ガッコウ』で見聞きしたことについて、お
「いえ、恐らく関係のあることですので、そちらもうかがいながら本題に入りたいと思います。わたくしたちが本日、無理を申し上げてまでこちらを
ディアブラントの肩がわずかに動いたことを、ウルティナは見逃さなかった。
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