第三章 第11話 妹二人
「
その
「
ユーリコレット・マリナレスと言う。
「
彼女がきょろきょろと探し回っているのは、もちろん
「
絶対に遅刻してはいけないと考えた彼女は、ずいぶん早くから待っていたのだ。
――
朝になって、発着する馬車の数がどんどん増えてくる。
そろそろ到着する頃だろうと気合いを入れたコレットだが、あまりに長い間待ち続けたせいで、ほんのちょっとだけ立ったままうとうとしてしまった。
運の悪いことに、その、ほんのちょっとの間に涼介たちは到着し、
「どこだろ……初めてここに来る人が到着してすぐ向かうところって」
しかもさらに
姉のマルグレーテは、コレットの
姉
が、同時に彼女の少し
残念ながら今回は、その心配が的中してしまったようだ。
「ねえねえ
「はあ? 人なんてそこらをうじゃうじゃ
「
「男と女の子の二人組ぃ? んー、そんなん特に珍しくもねえけどな……」
「そうそう、
「……おお、そう言えばいたな。コトラス買ってったぞ」
「その二人、どこに行った?」
「その辺で座って食べてたけど、しばらくしてあっちの方へ行っちまったな」
そう言って、
「あっちね?
「ところであんたもコトラス、どうだい?」
「……食べる」
◇
「もぐもぐ……んー、やっぱ分かんないなあ……」
次にコレットが向かったのは、とある大きな
直近の定期船がすでに出航済みであることは把握している。
そうすると、次は
「しょうがない。とりあえず片っ
コレットは人混みの中に飛び込んでいった。
◇
「ねえ
「……」
「お兄ちゃんってば!」
「……ん、何だ? セラ」
「何だ、じゃないでしょ?」
腰に手を当てて、セラピアーラはぷりぷりしながら兄――アーチークレール――を
「手伝わないんだったらあっち行っててよね! 忙しいんだから」
「ああ……
「ん~?」
いつもの兄らしからぬ態度に、セラは
「……
「いや……どうもしねえよ。 ……お、
「う、うん」
「すいませーん、
「あ、はーい!」
食事が終わった客に呼ばれて、セラは
(なーんか、変なのよね……)
先ほど、上の階から
普段から何を考えているのか分からないところはあるが、感情については割と表に出しがちな兄――そんな兄が
「
にっこりと笑って去って行く客に頭を下げながら、セラは考える。
(ドルさんと何か話したのかな? うーん……)
「ねえねえ」
(だとしても、お兄ちゃんがあんなにぼーっとするような話って何だろ)
「ねえねえってば」
(そう言えばお兄ちゃんがあの二人をうちに連れてきたのにも驚いたけど……何か関係あるのかなあ――)
「ねえねえちょっとちょっと!」
「えっ? あっ、はいっ!」
気が付くと、目の前に一人の
セラはまたしても慌てて返事をする。
「
「あー、えーっと
「え?」
「ちょっと教えてもらいたいんだけどさ」
「はい」
「隣の
「はい、そうですけど」
セラの答えに、その女性――コレット――は
「宿のお客さんの中にさ、二人組の――男の人と小さい女の子っていない?」
「えっ!?」
ちょうどその二人のことを考えていたセラは、驚いてつい
しかしそれも
「お客さんのことについては、教えられません」
「えー、いいじゃない」
「ダメです。
「そんな固いこと言わないでさー」
「ダメなんです。ごめんなさい」
そう言い切って頭を下げるセラを見て、コレットは
「そっかあ、ま、規則じゃしょーがないもんね。ありがとねー」
「すみません、お役に立てず」
「いいよいいよ、それじゃねー」
手をひらひらさせながら、コレットは店を出て行った。
◇
通りに戻ったコレットは、自然と
「分っかりやすいなー、あの子」
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