第三章 第10話 ヒリス
俺は今、ものすごい後悔と自己嫌悪に
(
彼女は目の前のベッドで静かに寝息を立てている。
その姿に向かって、俺は何度目かの詫びの言葉を心の中でこぼした。
考えてみれば、全くもって無理からぬことなんだ。
俺が学校を追放された朝、瑠奈は俺を追ってついてきた。
それからずっとザハドの
謎の襲撃を受けて、そのまま馬車に押し込まれるように乗った。
一晩中、一刻も早くピケに到着するのが第一とばかり、乗り心地など二の次でとにかくひたすら走り続ける車内ではろくに睡眠もとれず。
それでようやくピケに着くも、衣料品店を探したり宿屋を探したりで、とにかく歩き続けていた。
要するに、ゆっくりと身体を休める時間をほとんど取れていなかったのだ。
それに加えて、瑠奈は元々口数が極端に少ないこともあって――――いや、これはただの責任転嫁だな。
そんなことは百も承知だったんだから、余計に気を配って
(ホントにすまなかった……瑠奈)
それより何より、追手のことに気を取られ過ぎていたのだ。
少しでも早く、マリナレスさんの言う「ヴァルクス家」に向かうことばかりに
カーン……カーン……カーン……カーン…………
――コンコン、コン。
「……
俺が返事をすると静かにドアが
「
「
実際、飲ませた薬が効いているのか、瑠奈の表情も呼吸も倒れた時にくらべてずいぶん穏やかになってきている。
「それにしても、あの時の二人が今度は
「確かにすごい
目の前の少女――セラピアーラ――は、持っていたトレイを近くのテーブルの上に置くと、俺の方を向き直ってにっこり笑った。
「
「
「『セラ』でいいよ。あと、うちの
そうなのだ。
俺たちが案内された宿屋が、朝方に市場でぼっ立っていた俺たちに親切にしてくれた少女の店だったことにも驚いたんだけど、倒れた瑠奈を運ぶために馬車を呼んでくれたあの青年が、この子――セラの兄だったらしい。
アーチークレールと名乗ったその彼は、俺たちのことをセラに任せるとどこかにいってしまったようだが。
ただ……結果として世話にはなってるから、怪しいなどと思ってしまって申し訳ない気持ちはあるけれども、あの不審な
油断はするまい。
「それでりょーすけ、とりあえずはその子……えーっと、何て
「
「そうそう、るぅなね。そのるぅなが良くなるまでうちに泊まるんだよね?」
「そうさせてもらえると助かる。出来れば、次の
「うちはもちろん、お客さんは大歓迎だよ!」
「それと……
「お医者さんか、治癒師? ……どうだろ、呼んだことないからちょっと分からないかなあ」
「
「
ぱたり、とセラが扉を閉めて部屋を出て行くと、大きく深いため息が勝手に口をついて出た。
座っていた椅子が、ため息に合わせてギィと音を立てる。
今出来ることは、こんなもんだろうか。
ベッドに目を
このまま落ち着いてくれるといいんだけどな……ふぁ。
ヤバいな……俺も結構疲れてるかも……寝不足だしなあ…………くぅ……
◇◇◇
「
「ん? ……アーチーか、どうした」
ここは、八乙女涼介と久我瑠奈が宿泊することになった、ピケの
この宿屋の主人であり、アーチーとセラ――モレノア
姓が違うことからも分かる通り、兄妹とドルガリスに直接の血の繋がりはない。
「おじさんが言ってた
「む、本当か。それでどうした」
「この宿に
「そうか、
ドルガリスは座っていた
その姿は八乙女涼介より
ただし、肥満体というわけではなく、
「ザハドから
「ああ、分かった」
叔父の迫力ある
しかし今日は
「それでその二人は、何をやらかしたんだい?」
「詳しいことはまだ聞いておらん」
「ふーん……で、結局その二人をどうするのさ?」
「
「え……消す、って?」
若干
「――――
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