第三章 レアリウス篇
第三章 第01話 目覚め
時は流れ、日本では年度
そして――それはようやく、
ここからは再び、主舞台をエレディールに移して物語が
それは、日本における年度替わりの日から三日ほど
場所は、京都の
◇◇◇
「
「ええ」
二人を見送る人々の
「
「何ですか? サンドラ」
アルカサンドラの呼び掛けに、銀条会会長である銀月真琴は振り返って答えた。
京都に来てからベーヴェルス
特にサンドラは、ネイティブのようにとまでは流石にいかなくても、ちょっと聞いただけでは日本人が話しているものと勘違いするほど、
しかも、母子が学んでいるのは標準語なのだが、サンドラは独学で京ことばの勉強も並行して続けているらしく、真夜と話す時には彼女に合わせて京都弁を使うというほどの熱心な取り組みぶりなのだ。
「真夜さんと巫女様は、お二人でどこに行くのですか?」
「実はね……私も正確には知らないのです」
「え、そうなんですか?」
「ええ。あの二人以外でちゃんと知っているのは、お母さまとおばあさまだけ。つまり銀月家当主だけということですね」
「
「そうなんです」
真琴は視線を、歩き去る二人の背中に再び向けながら続けた。
「何年かに一度、こうして当主と巫女様はお二人で――――本当の名は分からないので
くるりと身体ごと振り返って、真琴は言った。
「――――当主だけが帰ってくるのです」
◇
二人の目の前に、木製の両開きの
扉の真ん中には、バスケットボールほどの半球が盛り上がっている。
琉智名は一歩進み出ると、その半球に静かに手を置いた。
すると――扉が静かに左右に
「いつも思うけど、ど
真夜の言葉に、琉智名は小さく微笑んで答えた。
「さ、参りましょう」
◇
扉の中に入ると、そこにはさらに地下へと続く階段があった。
それ以外には、何もない。
ただ、扉を含む四方の壁が不思議な絵画のような、何かの
扉がひとりでに静かに閉じる。
すると、壁全体がぼんやりと光を
階下へと導くように、階段にも照明のような光が次々に
真夜と琉智名は無言のまま、ゆっくりと階段を下り始めた。
◇
階段を下りた先は、半径五メートルほどのドームのような広間になっていた。
そして、その中央には
他には何もなく、それだけがただぽつんと。
「これもいつも思うん
「別に形などどうでもいいのですよ。そもそも
「それはまあ、そう
琉智名は笑いながらそう言うと寝台に近付き、その中に静かに身を横たえた。
胸の前で手を組み、真夜を見上げる。
「ではあとのこと、よろしく頼みましたよ」
「分かった。
「これから、いろいろと少し大変になるかも知れません。いつも以上に」
「そう
「
「うん」
そして、ふと思いついたように琉智名は付け加えた。
「そうそう、あの二人のことも。『
「サンドラとリウス
「そうですね。特に母親の方の
それだけ言うと、琉智名は目を閉じた。
彼女の
「それでは、また」
「うん、おやすみ。琉智名さま」
寝台に横たわる琉智名の姿は半透明になり、下の敷物が透けて見える。
そのまま彼女はもう、微動だにしなくなった。
真夜はガラス製のふたを、寝台の上に静かに
そして、目を
「おやすみ、
◇
そこにいるのは、五人だけ。
それは二人の
彼らは予定されている
その中で、一人の
「おお……『
奥翼卿の一人が、思わず感嘆の声を漏らす。
彼は五人の中で
女性が上半身を静かに起こすと、五人は一斉に
半身を起こしたまま、女性は尋ねる。
「……今は?」
「
五人の中の、最も年長の者が
「そう……予定通りですね」
少し考えてからそう言うと女性は寝台を降り、五人の前に立つ。
よく通る鈴のような声で、言葉をかけた。
「
「
五人は
「
「はっ」
ウルティナの呼びかけで、
「
「はっ」
次に、
「二人とも、こちらへ」
「はっ」
「はっ」
二人の
「ヤルマヌエル、エステリーヌ、そして……ガルマードでしたか」
「はっ」
そして、残る三人の
「またしばらく世話になります。皆さん、よろしく願います」
「ははっ」
「これから数日の間は、まずはいつものように
「ははっ」
「その
その女性――ウルティナは小さな
「とりあえずは
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