第二章 第33話 可能性
「何を今さら」
「どちら側も何も、とっくに私を引き込んで
「ふむ、まあそういうことだ。我々の今後についての具体的な話はこれからするとして、まず君がきちんと立場を理解してくれているようで嬉しいよ」
「恐れ入ります」
宗久は軽く頭を下げて答える。
その様子を見て、少司は他の二人に声を掛けた。
「
「そうですね。僕の
「
「
「ええ、どうぞ」
「それでは、お言葉に甘えて」
宗久はまず、先ほどから
それは先ほど
「まず九条さん、ご先祖の島の北半分が消えてしまったと仰っていましたが」
「ええ」
「その消えてしまった部分や、そこに住んでいた人たちはどうなってしまったんですかね?」
「やっぱりそこ、気になりますよね?」
「と言っても、面白い答えをお返し出来るわけではないんですけどね」
「それはつまり……」
「ご明察です。要するに分からないんですよ。少なくとも住民が戻ってきた――そう言った事象は
「なるほど……」
この時、宗久の
彼の大事なものを、一時的にとは言え奪った
「これはまだ推測の域を出ないお話なのですが……」
ここで
「もしかしたら、消え去った人々がどこかで生き残っている可能性がありますの」
「!」
「えっ!?」
麗の言葉に、宗久のみならず
どうやら彼らにとっても、初めて明かされる情報らしい。
「
「先ほども申し上げましたが、あくまで推論の段階に過ぎませんのよ」
「少し詳しくお伺いしてもいいかな、白鳥さん」
麗は小さく頷くと、話を続けた。
「まだ夏の
「何か差し迫ったことでもありましたかな?」
「ええ。先ほども話に出た、今岡小学校消失事件についてでした」
「四度目――つまり最後の『すれ違い』とやらの影響で消えてしまった事件――そう仰っていましたね」
「そうですわ、犬養さん。そして会議では、あなたが指摘されたように現象がいささか限定的だという考察がなされましたの」
そう言うと、麗は宗久を見て小さく
「黒家の当主は、人為的な現象ではないかと言っていましたわ。そして、現場の様子から
「転移……ですか?」
「より正確に言うのなら、その消え去った球状空間は別の場所と丸ごと『入れ替わった』のではないかとのことでしたわね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ
九条豹牙が、
「それって僕も初耳なんですけど、ものすごく重要な話じゃないですか!」
「そうですわね」
「そうですわねって……もしその話が本当なんだとしたら、これまでの論が根底から
「落ち着いてくださいな、
「それに、過去の事象までもが人為的なものだとは申し上げていません。小学校の件も『すれ違い』が関わっていることは確かだとわたくしは思います。消失にしろ転移にしろ、人がそう簡単に
「ということは白鳥さん、消えた人たちが入れ替わった先というのはあれかね」
「ええ、少司さん。恐らく『
詠従だかどこだか知らないが、あの男が生きている――?
「なるほど……
「そういうことですわ」
あの男――
そう考えるだけで、宗久は心の中でどす黒いものが
思わず
そんな彼の様子を、少司は注意深く見ていた。
「例え現段階では可能性に過ぎないとしても、白鳥さんが仰ったことは極めて重要だ。もしかしたら事件解決に結びつくかも知れないが、痛し
「……え? あ、はい。そうですね」
宗久が我に返った様子で答えるのを見て、少司は続けた。
「それではこれからのことについて、もう少し
少司は軽く肩を
ほどなく
「まずは腹ごしらえといこうじゃないか。腹が減っては何とやら、だからな」
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