第二章 第34話 居酒屋
秋は
「うう、そろそろ冬かあ……」
寒いわ
(今日は道場も休みだし、どっかであったかいもんでも食べてこうかな……)
ライダースジャケットの
こちらを、見ている。
(あれは……)
その人影――
思わず立ち止まる讃羅良の五歩ほど手前で止まると、彼女は言った。
「ねえ、ちょっと付き合ってくれない?」
◇
「
何の変哲もないチェーンの居酒屋の
それに微妙な表情でジョッキを合わせるのは、讃羅良を呼び出した当人の
迅と花恋と慶太郎は、もともと
玲が今岡小学校消失事件で姿を消し、三人はそれは
――玲ちゃん、多分ですけど――――生きてますよ――
讃羅良の
ちなみに彼らのジョッキの中身は、
いわゆるモクテル――ノンアルコールカクテルだ。
シャーリーテンプルをんぐんぐと
「いやあびっくりしちゃいましたよー。南雲先輩ったら、すんごいマジな顔して『ねえ、ちょっと付き合ってくれない?』なんて言うから、めっちゃ驚いちゃいましたよー」
「ふん……」
讃羅良のノリに、花恋は不機嫌そうにジョッキをテーブルにごとりと置いた。
「ちっとも驚いてなんかいないくせに」
「そんなことないですってばー」
「まあ、俺も驚いたけどな」
迅が口を
「俺たち、確かに
「僕もてっきり、もっと
「人気のない場所って?」
慶太郎の
「えーと……体育館裏とか?」
「そう言うの、中学とか高校までじゃないんですか? 大学生が体育館裏に呼び出すとか――ちょっとウケるんですけど」
「居酒屋にしようって、あなたが言い出したんじゃないの」
くすくす笑う讃羅良を、花恋が
「『どうせならご飯食べながらにしません?』とか。言っとくけどそういうノリじゃないんだからね、
「分かってますって! 玲ちゃんのことですよね?」
「えっ……う」
突然本題に切り込まれて、思わず言葉につまる花恋。
「だって、夏の頃からずっと何か調べてたんですよね?」
「え、もしかして気付いてたの!?」
「当たり前じゃないですかー。
「はあ……やっぱりバレてたんだね」
にこにこと話す讃羅良に、慶太郎がため息をつく。
そこに、注文していた料理が届き始めた。
「お待たせしましたー、こちらポテトのトリプルチーズ大盛りと焼き鳥の盛り合わせになりまーす!」
「おっ、来た来た!」
「……あんたホント好きね、ポテト」
花恋の
「南雲さんだって好きだろ? これ。ほら、食べてもいいぜ?」
「言われなくたって食べるもん」
「えーっと、そろそろ話、始めない? 一応、檜山さんを呼びつけてるんだしさ」
「さっすが東郷先輩! 気
「いや、まあ……」
このままでは、ただの普通の飲み会になる……。
あながち的外れとも言えない危険を感じた慶太郎は、少し強引にでも話を進めようと決意した。
「
突然、慶太郎が発した言葉に、讃羅良の肩がぴくりと動く。
「
「……」
「何を意味するのか、分かる? 檜山さん」
慶太郎が讃羅良の眼をじっと見つめた。
讃羅良は
「もちろん」
「……そうだよね。これらは、ある人たちが経営している会社の名前なんだけど」
「そうですねー」
「あ、あともうひとつ……えーっと、『(株)銀河不動産』だったかな」
わずかに目を
「へえ……結構頑張ったんですね、先輩たち」
「うん、まあね。ってか、ちょっとプロの力を借りちゃったりもしたんだけどね」
慶太郎は、グラスのサラトガ・クーラーで舌を
「僕たち、頑張って調べたんだよ、檜山さん。君が学食で上野原さんについて残した言葉――彼女が多分生きてるってやつ。その言葉の真意を確かめるためにさ」
「……私はいい
「そうなの? ……まあ本当は直接
慶太郎の言葉に、花恋と迅がうんうんと
「これから、僕たちが調べて分かったことを君に伝えるよ。それを踏まえた上で、君に答えて欲しいことがあるんだ、檜山さん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます