第二章 第29話 話記
敢えて情報を隠し、披露するタイミングを計っていた――。
悪びれる様子もなく、白状する
「それはですね――『かくてなほ
「合一……と言うことは」
「そうです」
豹牙は力強く
「この世界と異世界が、
「は…………――――」
今度こそ、宗久は口を開いたまま固まってしまった。
どう反応すればいいのか、何と返せばいいのか、まるで思い浮かばない。
「しかしですね、当時巫女さんが伝えた言葉をその場の誰もが信じようとしなかったそうです。きっと今の犬養さんのような表情をしていたのかも知れませんね」
「あ……いや」
どうにも口が思うように動かない宗久。
しかし自分の受けた印象をことさら隠す気はなかった。
あまりにも、あまりにも
ただの与太話ではないか。
「頭のおかしい女の
「正直なところ、ご先祖様以外の
「僕も同感です。そもそも、その場ではご先祖様も同じ感想を持ったそうですから」
「ん? と
自分のあごを
「そのご先祖様なんですが……ある離島に
「知行――つまり領地のことですか」
「そうです。で、巫女さんが去った数日後、その領地――
「報せ……」
宗久は、
二人ともここまで細かな話を聞くのは初めてだったのだろうか、興味深そうに瞳を輝かせている。
「それによれば、村民から訴えがあったそうなんです――島の北半分がごっそりなくなってしまった、と」
――島の半分が消失……またしても新たな
しかも、どこかで聞いたような話。
「その情報にピンときたご先祖様は、もう一度ちゃんと話を聞くために、去ってしまった巫女さんを全力で捜索させたそうです」
「それで、見つかったんですか?」
「ええ、ご先祖様の根拠地はもちろん京都でして、案外
京都の……神社。
宗久はまたしても、記憶の
つい最近、側近である
「そんなわけで、その時ご先祖様が巫女さんから聞き出せる限りのことを聞き出して、まとめたものが「
「では詠従研究所と言う名称は、そこから?」
「もちろん僕が決めたわけじゃありませんが、きっとそういうことでしょうね」
「なるほど……」
話をよく聞いてみれば、それなりに説得力があるように宗久は感じていた。
とは言っても、二つの世界が一つに合わさるなどという暴論を肯定する気にはまだ到底なれないが。
「巫女さんの話は……どうにも雲をつかむような
「会えない、とはどういうことなんでしょうか」
「分かりません。
「どこか別の場所に
「どうなんでしょうね。周辺の村人たちによれば、『巫女様は
「建物……神社の
「さあ」
豹牙は肩を
「正確には神社ではないですね。『
「銀条会……――ん?」
「そうだよ、犬養君」
宗久の反応を見て、それまでじっと黙って聞いていた少司が口を
「少し前に、例の外国人
「あ、あれか……」
「つまるところ、その巫女とやらを
「……」
「銀条会の
銀月左京。
「そして
膝の上の
ここ最近の彼の苛立ちの原因となっていた屈辱的な二つの
――即ち、銀月家は敵である、と。
すると、それまで静かに微笑んでいた
「巫女の
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