第二章 第26話 浮遊
その二人の男女は、軽く
自分と面識のある二人ではない……と
仕事
「お二人とも、どうぞお座りください」
「犬養君、紹介しよう。まずこちらの男性が
「九条です。お初にお目にかかります、犬養さん」
「犬養宗久です」
――若いな。
自分と同年代か少し上と言ったところか。
えいじゅう研究所――聞いたことのない施設名だが……。
いつもの癖で早速プロファイリングを始める宗久。
そんな彼の様子に気付きながらも、少司は構わず進める。
「そしてこちらの女性が、
「白鳥麗と申します。お話は少司さんより
「犬養宗久です」
ドメン・ブラン――こちらも知らん会社だ……。
うっそりと
年のころは――
「おいおい犬養君。女性をそんな目で見るもんじゃあない」
宗久のあまりに
しかし麗はさして気にした風でもなく、
「構いませんわ。
「あ、いや、これは大変失礼いたしました」
ふと気が付いたように、宗久は頭を下げた。
いかんな……どうやら自分は少しナーバスになっているらしい。
◇
「ま、
多少なりとも持ち直した
「そうだ。まあ他に言いようがないからそう表現するしかないのだが――超能力、異能、
言葉の持つ意味はいくつかあるが、彼の言うリアリストとは決して感情に左右されず、冷静な対処や応対・評価が出来る人間のことだった。
想像力や推理力が重要であっても、それにもたれかかるような
砂のブロックではなく事実を積み上げろ――それが
――その男の口から、
「ははは、思った通りの反応だな。まあそうでなくては困るのだが」
「それは……
「そうなんだよ。事実としての『魔法』だ」
宗久の戸惑いにそう答えると、少司は再び口を開けて笑った。
まるで悪だくみが図に当たった子どものようだ。
少しばかり
「少司さんのお言葉とは思えない矛盾ですね。『事実』と『魔法』は対義語のようなものじゃないですか。そんな表現はあり得ない」
「その通りだ、
少司はそう言うと、
そのリトルシガーが、少司が禁煙するまで愛好していた銘柄だと言うことを、宗久は知っている。
禁煙は
封を
「白鳥さん、お願いします」
「はい」
白鳥麗がそう答えるや
ほんのりバニラの香りを
宗久は目を
「こ、これは……!?」
「だから魔法だよ、犬養君」
「ま、魔法?」
少司は宗久の顔を楽しそうに
「一応、禁煙の誓いは破っていないのでね」
「はあ……」
「どうだ? 魔法は」
「い、いや」
宗久は、それでも
「何かのトリック、ではないかと」
「ははは、そう言うと思ったよ。それじゃ白鳥さん、もうひと押し、お願いします」
「わかりましたわ」
ぐらり。
宗久は地震が起きたのかと思った。
しかし、足元の座布団が動いたのは左右ではなく、上方向だった。
「ううわっ!」
いつもの宗久らしからぬ声が思わず口を突いて出る。
それでも無様に体勢を崩さず正座したままの姿勢を
そうして、彼の目線は他の三人よりも半メートルほど上に位置していた。
少司も
宗久は座布団ごと宙に浮いたまま、恐る恐る後ろを振り返った。
もちろん、誰もいない。
彼の背中を、再び冷たい汗が
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