第二章 第24話 覚悟
そこは彼の先輩であり、小学校消失事件で行方不明になった
和馬はそこで、涼介の離婚したかつての元妻――
注文をして、久しぶりに食べるショウガ焼き定食を楽しんでいたところ、店の扉から突然現れた
その男は莉緒を
しかし、男の
我に返って気
結局、自分から
莉緒から話を聞いて欲しいと
◇
先日、
大抵は一日せいぜい二往復程度、「調子はどうですか?」とか「あれから何かありましたか?」くらいの内容。
莉緒の
和馬は、ある意味同じ
しかし、あれこれ考えた結果明らかになるのは、自分がこういう時に
(ただの学校の先生だしな……オレ)
自分の仕事にはもちろん
だが――彼は真実を知ってしまった。
それを知って、もし莉緒が一人で
それでも、お互い似た立場にいるという
助けてあげたい気持ちと、何もしてやれない無力感で、ベッドの上で
(ん? ……あっ)
横目で画面を見た和馬は驚く。
そこには<
電話はおろか、メッセージすら自分から送ってくることのほどんどない彼女が、音声通話を求めている。
「はいっ、もしもし――」
◇
そして翌日夕方、和馬は
もちろん、彼はそこが
門をくぐった和馬は、黒瀬家の
ほんの一分も経たないうちに、黒瀬
「久しぶりだね、和馬くん」
「ご無沙汰してます、お
「何だか電話だとずいぶん
「はい……」
「今日はこの
「ありがとうございます。実は――――」
☆
「――――ふーむ、なるほどね」
そんな彼へ、和馬は申し訳なさそうな表情で
「すみません……オレ、こんなことをお
「……」
「自分の手に余るなら、無責任に首を突っ込むなって自分でも思います。でも、でもオレ、
「まあまあ、顔を上げなよ、和馬くん」
白人は目の前でしょぼくれている二つ年下の
「まあはっきり言えば、
「はい……」
「なかなかに面倒そうな話だし……ちょっと
「やっぱり……そうですよね……」
「それで、だ。和馬くん」
白人は続けた。
「結局君は、どうしたいと思ってるんだい?」
「どう……とは?」
「君がその女性――えーと、
「……はい」
「つまり、具体的にどういう状態になることを望んでいるのかってことさ。彼女を救うにもいろんな形がある。例えば――――敵対者を
「えっ……」
和馬は思わず
普段と変わらない、
「消すって……まさか、殺すってことですか?」
「まあ消すにもいろいろあるけど」
「さすがに殺すってのは……ちょっと」
「和馬くん」
少し真面目な顔つきで、白人が和馬の眼を見る。
「『くさいニオイは元から
「え? ……いや、聞いたことあるようなないような……」
「昭和の時代のCMのコピーらしいけど、言い得て
「だから殺すべき、だと?」
「まあもし、君がそういう意味で私を頼ってきたとしたら、君のしたことは殺人の
「……」
黙り込む和馬を白人はじっと見つめる。
「――思ったんですけど、オレは別に相手に死んでほしいってわけじゃないみたいです。要するに奴らが
「ふむ」
「オレ自身には、奴らに対する憎しみとかは……まあやり
「それはつまり、殺さずに
「う……そう、だと思います」
「ふーむ……」
白人は腕を組んだまま、再び小さく
その姿を見て、和馬は自分の都合で白人に無理難題を吹っ掛けたことに気付く。
「や、やっぱり難しいです、かね……?」
「そうだねえ――さすがにお茶の子さいさいとは言えないかな」
「すみません……オレ、頼んでる
「和馬くん。ひとつ言っておくけどね」
白人は人差し指を一本立てて言った。
「何かよく分からないけど、どうにかしてくださいくらいの気持ちで君がいるのなら、私は動くつもりはないよ」
「はい……そうですよね」
「私はね――――君の覚悟のほどが知りたいのさ」
「覚悟、ですか……?」
和馬は思わずごくりと
厳しい表情を
「今回のことは、その辺の野良猫に気まぐれに
和馬は五秒ほど考えた
「はい、お願いします!」
「さして親しいというほどでもない、ただの先輩である人の元妻と実家のために?」
「……そうですね。確かにすごく親しい人、とまでは言えないと思います」
「……」
「でも、あの人たちはオレと同じ
ここで和馬の顔が、くしゃりと
彼の
「それに、どうせオレにはもう――もう、
「そんな捨て
白人は苦笑しつつ言った。
「君を危険な目に
白人はここで、真白の生存の可能性について明かすかどうか迷った。
が、結局触れなかった。
「君にそこまでの覚悟があるって言うのなら――可愛い
「ほ、ホントですか!? ありがとうございます!」
和馬は立ち上がって、白人に深々と頭を下げた。
それを
「ただね……私の力でもどうにか出来るとは思うんだけど、それだとちょっと時間がかかりそうなんだ。割と急ぐんだろう?」
「はい」
莉緒は和馬への電話で、最後
あまり
「それなら――仕方ないか。あっちの力を借りよう」
そう言うと、白人はその場でどこかへと電話をかけ始めた。
彼の様子を、和馬はじっと見つめている。
「――あ、もしもし……はい、そうです。黒瀬白人です。ご無沙汰しております――――ああいえ、その
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