第二章 第14話 お姉ちゃん
しかし、行く
アルカサンドラの体調も思わしくなく、息子のエルヴァリウスは多少の危険は覚悟の上で、母親を「びょいん」に連れて行くことを決意する。
一方、
幸い、今回は厳重注意で済ませられたが、ベーヴェルス
そのことを娘の
両親の気持ちを心の底では理解しつつも、手を
更に、県警本部の
一時は
しかし、全速力で逃亡した二人は
そこを偶然車で通りかかった
いろいろ考えた
その真夜の車に乗っている
◇
「もしかして
運転席から出てきた女性に思わぬ声を掛けられて、
「――あっ……あの時の、お姉さん……?」
目の前の女性が、自分が先日
「そうよ~、確か……理世ちゃん、だっけ?」
「はい、そうです。あの、あの時は――」
そう言いかけて、
「違う違う!」
「え?」
「お姉さん、後ろの人!」
「後ろ?」
「車の後ろに乗ってる人たち!」
「え……ああ、あの二人?」
「そう!」
「あの二人が、どうかした?」
「乗せて!」
「え、え?」
「いいからあたしも乗せて!」
そう叫ぶと、理世は女性の答えも待たずに助手席のドアを
「!
「そら、ロックかかってる
「開けて!」
「ええ!?」
「開けて! 乗せて!」
理世は泣き出した。
その女性――
そんなやり取りの
(しゃあないなあ……)
☆
しかし、ぐったりとして動かない様子を見て、乗り込んできた真夜に
「ねえねえお姉さん、どうしちゃったの!?」
「その二人が?」
「そう!」
「とりあえずさ、その雨がっぱ
そう言われて初めて、理世は自分が助手席を盛大に
「あ……そのよ、
「それはいいからさ、脱いだらお話、聞かせて?」
「うん……あ、は、はい」
☆
「――なるほど~、そう言うことね」
「は、はい」
目的地に向かう道すがら、
理世はベーヴェルス
その
(ふ~む……)
真夜も、近くの小学校で起きた謎の消失事件については知っていた。
ただ、理世の話にはいくつか考察すべき点がある。
今はまだ、それについて口には出さずにいたが。
「あのう……」
「ん? 何?」
「お
とりあえずサンドラとリウスが見つかって、
冷静になってくると、さっきまでの取り乱した自分が年上の、しかも自分を以前助けてくれた相手に向かってずいぶん失礼なことをしたんじゃないかと、不安になっていた。
今は言葉
そんな助手席の
あと、標準語を意識しながら。
「心配せんで――しなくていいよ。約束する」
「本当! あ……本当ですか? お姉さん」
「もう、そんな堅苦しくしなくていいから。そう言えば名乗ってなかったね」
苦笑しながら続ける真夜。
「うちは
「ええ……ちょっとそれは……呼びにくい、です……」
「そう? それなら――『真夜
「うーん……『真夜お姉ちゃん』なら……」
「何かあんまり変わらない気がするけど……それでいっか」
そう答えながら、真夜はゆっくりとステアリングを切った。
車一台がやっと通れるほどの
「あのう、真夜、お姉ちゃん」
「ん?」
「今、どこに向かってるの――ですか?」
「普通にしゃべってええよ――いいよ。理世ちゃんのパパやママにしゃべる感じで」
「――分か……った。これでいい? ――あっ!」
理世は何か大切なことを思い出したらしい。
「どしたの?」
「えーっと……お父さんとお母さんに、黙って探しに出ちゃったから……」
「お、それはきっと心配してるね~」
「ど……どうしよう……」
「じゃあ、うちから連絡してあげるよ。今ね、
「うん、知ってる。
「おお、来てたんだね~。で、そこに着いたらまず
「ほんと!?」
「もちろん!」
真夜は胸を張って請け負った。
「あたし、お父さんのもお母さんのも覚えてるから! スマホの番号!」
「お、偉いんだね~」
「うん!」
赤い
近道を通ったのだ。
真夜は手慣れた様子で、そのまま車を敷地内に乗り入れた。
――玄関の前に、
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