第二章 第09話 彷徨
自分たちの存在が、ためにならないどころか、
ある晩、二人は荷物をまとめ、そっと家を出た。
……
その
◇
「
「何?」
「今、どこへ向かっているの?」
「……特に考えてないわ」
平静を
「そうかあ――そうだよね」
それは気楽な感じで応答したリウスとて、同じことである。
……沈黙したまま、どこへとなく
いつしか彼らは、あまり大きくない公園に
本人たちは知る
「とりあえず今夜はここで休みましょう」
公園の中を見回してから、サンドラは言った。
「ここなら座るところもあるし、
「そうだね」
それでも、深夜ともなれば風がなくとも、
◇
翌日、二人の姿はあるコンビニの前にあった。
「ここで
アルカサンドラは、手に財布を握りしめて言った。
「その中に入ってるんだよね、『おかね』が」
「ええ」
少し不安そうに
「リウス」
「何?」
「前に『りょこう』に行った時、『こんびに』で『おかいもの』したの、覚えてる?」
「うん」
エルヴァリウスは答えた。
――あの
その記憶が、彼を優しく
「『おかね』で何かと
「そうね」
最初からなかったわけではないが、いつしか
彼ら地下都市の
それを
「でも、
「あの時はまだ私たち、こちらの
ウィーン。
ピロリロピロリロピロリロ――――
自動ドアをくぐると、二人を
「さあ」
サンドラは言った。
「『おかいもの』をしましょう。なるべく交換比率がよくて、腹持ちのいいものを」
◇
それから
そうして明るいうちは、よりよい
――明日の見えない、毎日を。
◇
「うわあ……」
「これは……すごいわね……」
この
そこでは海上自衛隊や米軍によって、たまに
彼らの
「これが、『うぅみ』なのね、きっと」
アルカサンドラ――サンドラは、
「『みぃずーみ』も大きかったけど……これはちょっと
エルヴァリウス――リウスも
二人の手には、今日の夕ご飯の分のおにぎりが
堤防の上に腰かけながら、
「僕……いろいろ苦労はしたけどさ」
顔を前方に向けたまま、ぼそりと言うリウス。
「
「……そうかもね」
「こんな
「そうね……」
ささやかな
☆
「おい、あんたらここ
「え……」
海を見た
ベンチに腰かけていた二人に突然
「あんたらホームレス? 困るんだよね、ここに住み着かれちゃ」
驚きで何も言えずにいる
言われている言葉の意味はよく分からなくても、表情と
サンドラが立ち上がり、男性と
「あ、わたし、いる、ここ、いい……いけない、です、か?」
「何だあ? 外人かよ」
男性は、彼女の顔を見て、日本人の顔立ちではないことに気付いたようだ。
「日本語がちゃんとしゃべれねえのか? ……参ったなこりゃ」
「あ、う……」
リウスも立ち上がる。
先日、
「お、何だ? やんのか?」
背の高いリウスが緊張した
彼が手を出すような雰囲気でないと
「とにかくよ、俺ぁそこの住人だからよ、変な外人が
そう言って、その場を
――残されたサンドラとリウスは、硬い表情でしばらく立ち
「……
リウスがようやく口を開く。
何と答えたものか
それでも、言葉がよく分からなくても、一つの事実について彼女は確実に理解していた。
――もう、ここにいることは出来ないことを。
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