第二章 第05話 成就
約
それ以来、暁と
◇
そんな二人は、今、F市南西部にある
通称「レオの森」とも呼ばれている。
結構な昔から、誰ともなしにそう呼んでいるということである。
――残暑
「今日は、ここからの景色を、
時刻は午後六時半。
西の空に太陽の姿はもうないが、
「それで、今日の夕ご飯は少し早かったんですね」
志桜里が答えた。
二人は先ほど、岩本山
暁の希望で、チーズフォンデュコースを選んだ。
「鏡さん、家に帰った
「私は――大丈夫ですよ?」
「ええ、ホントですかぁ?」
「――もしかしたら……何かつまんじゃうかも、ですけど……」
「太りますよ?」
「もうっ……」
――もしここに
アイシングたっぷりのドーナツにメイプルシロップをどばどばかけて、上からアイスクリームをでんと乗せたスイーツを食べたような顔――――いや、これは案外イケるか。
まあともかく、いつものようにげんなりした表情を見せたに違いない。
――しかし、二人の距離は、お互いの肩が触れるか触れないかのぎりぎりをまだ
「えーっと、あっちかな……」
駐車場を出て、公園の中に入った二人は、暁の先導で南東へ向かう歩道を進んだ。
大きな
カフェは既に閉店しているようだ。
そのまま歩いていくと、視界を
「わあ……!」
思わず志桜里は
暁と志桜里も、
「すごい……ですね」
「ええ……」
志桜里の感想に、言葉少なに答える暁。
彼の自宅があるF市。
その市内にあるこの夜景スポットを、暁は初めて訪れたわけではない。
岩本山公園は昼間でも眺めがよく、桜を始め梅や
この
「何だか……宝石が散らばっているみたい、です……」
「ええ……」
夜景の美しい場所と認識したのは、彼が大学生の時、仲間数人と遊びに来た時だった。
「レオの森」という通称を知ったのも、その当時の事だった。
「すごく……きれい」
「ええ……」
――残念ながら暁にそんな気の
「……」
「……」
しかし
――彼女はこの
今日が、四回目の食事だった。
暁の仕事の関係で、誘われるのは水曜日がほとんど。
最初の食事は、何とN市内の
メッセージアプリ
しかし、
(
と、天然ぶりを
「でも、何か面白いじゃん。そのかれぴっぴ。うなぎ、美味しかったんでしょ?」
「う、うん、まあね……」
「あたしも見てみたいなー、そのかれぴ」
「ちょ、それは……だめ」
と言う会話を
二回目の食事は、N市内を流れる
狩野川の
大学生のデートと言えば、クラスメイトたちの話などから、
そんなテンプレ展開が普通だと思っていた
「朝霧さんのお
「うち? ……うーん、あの辺かなあ」
そう言って、
そんな彼が横に立っていることに、志桜里は安心感を
それより何より、「不可思議な事件で父親を失った者同士」という、滅多に
――それからしばらくの
……と、
「
「……はい」
暁は手すりに両
「僕と――――付き合ってもらえませんか?」
彼の
彼女もまた、星の光と街の
「はい」
何の
そこで初めて、暁は志桜里の
そして――あの出会った日と同じように右手を差し出した。
「よろしく、お願いします」
にっこり笑う彼の手を取り、志桜里は優しく握り返した。
あの日感じたような
「――こちらこそ、よろしくお願いします」
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