第二章 第02話 蒼白
九月のある朝、登校しようとした
――それは、近所に住む
そして、その日の夜。
◇
「あなた、またなのよ」
二階にある天方
さくらは
「うーむ……」
陸が腕を組んで
時刻は午後十一時過ぎ。
「やっぱり、
「そうみたいね。お向かいの
「そうか……」
五味村のスマホを
それから
シンプル?に生ごみがぶちまけられていたこともあったし、より悪質さを感じさせるケースでは、車の運転席側のドアノブの内側に、接着剤らしきものが大量に塗られていたことすらあったのだ。
接着剤の件は、使われていたものが幸か不幸か木工用ボンドらしかったので、原状復帰に手間はかかったものの、それほどの大事には至らずに済んだ。
さすがに
「ちょっと変わった人だとは思ってたけど、まさかこんなことになるとはなあ……」
「一度ちゃんとお
「うーん……あちらさんは家族とかいるのかい?」
「確か――旦那さんがいらっしゃるはずだけど、単身赴任中だって聞いたわ」
「お子さんとかは?」
「いないんじゃないかしら……」
「そうか……」
しばしの
さくらは、夫の思考を邪魔しないように、口を閉じた。
(でも……何の策もなしに
(きっと、
「なあ、さくら」
「はい」
考えがまとまったらしく、陸は妻に話しかける。
「ご近所さんの情報から、やったのは五味村さんだと分かってはいるけれど、今のところ何の証拠もない」
「そうね」
「このまま突撃しても、多分しらばっくれられてお
「でしょうね」
「だから――ちょっと
「うん」
「仮に警察とかに相談するにしても、ちゃんと証明できるものがあった方がいいだろうしね」
「私もそう思う」
「明日、ちょうど休みだからさ、ホームセンターに行って防犯カメラを買ってくるよ。本当は気分転換にあの二人も連れて行ってやりたいところだけど……」
「そうね……ここのところ、ちょっと
あれほど毎日楽しそうに水
大きな
サンドラにも気にしないようにと伝えていたが、彼女も
「とにかく」
さくらは言った。
「あの二人は
◇
そして翌日、予定通り
玄関前が撮影できるように
こうしてはっきりと警戒していることを示せば、さすがにしばらくは
何と――設置した翌朝から早速、朝刊を抜き取り、玄関ポーチにバラ
「……カメラのことなんか、全く気にしてないみたいだね……」
「マスクをつけてるからって、油断してるのかしら……」
そしてその翌朝には、五味村は大きな黒いポリ袋を手にしており、それを
その時刻は午前四時過ぎ。
東の空は
陸たちは……
――
おまけに彼女は、カメラに向かって「あっかんべー」までしてみせたのだ。
……たった三日で、十分すぎるほどの証拠が
五味村の犯行であることの裏取りとしては成功に終わったのだが、陸たちは別の心配に悩まされることになった。
――この人に、まともな話が通じるのだろうか……と。
◇
――――ところが。
――
インターフォンのボタンを押すと、妙に
陸が名乗り、話があると告げると、思いの
「失礼ですが、旦那さんはいらっしゃいますか?」
陸の問いに、五味村はいないと答える。
しかし、いないと言うのならば仕方ない。
――とりあえず五味村に、二人を奥まで通すつもりはないようで、玄関スペースでやり取りは始まった。
最初のうちは、陸の事実確認に対して五味村は
しかし……陸の横でさくらがスマホを取り出し、証拠映像を流し始めたその
――――何と五味村は、その場でがばりと土下座を始めたのだった。
曰く、そのために寂しさが
曰く、そんな時に
曰く、楽しそうにしている様子が、
曰く、その
そうした内容を
しかし一応と、今後このようなことを決してしないという、
――
◇
――そしてその二日後、病院からの電話に、
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