第一章 第24話 三家会議 その3
その
◇
「ここからが本番なんですが、今回のこの事件、どう思われますか?」
「どう思うとはずいぶん漠然とした問いだが、枝が多いってことについてかな?」
「枝の数についてでしたら、わたくしは特に違和感を覚えません」
「私も摩子さんと同じだねえ」
玄一と摩子が答えていく。
「何しろ静岡県の
「まあ私も数が多めだとは思いますけど、そこはあまり気にしてませんよ。玄一さんの言う通りです」
「それでは、何を問題にしてますの?」
「現象そのものについてですよ」
白人はスクリーンの画面を切り替えた。
ここ最近では世界的にお
写真ではまだむき出しの状態だが、実際の校舎の断面は既にブルーシートで
「先ほども説明しましたが、『消失』と言うように校舎の一部分がまるまる消えているんですよね。
「現場にいたとされる人たちの――まあ身体の一部とか、血液反応なんかもなかったらしいね」
「そうです。おまけにこちらも説明済みですが、
「要するに、どういうことですの?
腕を組んで自分を
「まあまあ、今日は私の独演会ってわけじゃないんですから、皆さんの考えも聞かせて欲しいんですよ」
「……白人さんはつまるところ、この事件と
「平たく言えば、そんなところです」
「ふうむ……」
あご
「関連性があると言うのなら、具体的に
「それに答える前に、玄一さんはどう思っているのかお聞かせいただけるとありがたいんですが」
「私かい? うーん」
髭をいじる手を止める玄一。
何か考え込んでいる様子の彼に、摩子が声を掛ける。
「玄一さん、そんなに深く考えなくてもよろしいのでは? ここにはわたくしたちしかおりませんし」
「まあね、別に遠慮しているわけじゃないんだけど、どうも性格的にね。不確実なことをあまり口にしたくないんだよ」
「その姿勢は素晴らしいと思いますわ。ですが、たとえ推論でもぶつけあっていくうちに何かが
「摩子さんがそこまで言うなら……ね」
玄一は両
あのポーズである。
名前が多少似ていることもあってか、心を決めて発言する時、彼はこの体勢をしばしばとる。
「まず今回の事件が我々と関係があるかどうかという点について、あくまで現時点での
「……」
「……」
「……」
「……」
☆
「おい、クソ
「何よ、クソ
隣室で、会議の様子をモニター越しに見守る護衛たち。
珍しく拳心の方から讃羅良に声を掛けた。
「白人さんたち、ぽけーっとして口開けてるぜ? 何が起こった?」
「あんた、知らないの?」
護衛のくせに、と言わんばかりの
「あのポーズ、いつもの玄一おじさんじゃない」
「はあ?」
「玄一さんは、こうと決めて話し出すとああなるんだ」
首を
「本人も分かってやってるみたいだし……様式美みたいなもんだな」
「ようきしび……って何すか?」
「よ・う・し・き・び。お約束ってことよ、アホ拳心」
「んだとコラ?」
「やめんかアホ」
父親の
「よく分かんねえけど、玄一さんの口元を見てみろよ。あんな
「あんたが心配しなくても、ちゃんと音声認識
「はあ~、白人さんのところはやたらすげえなあ……」
くすり、と
――会議は、まだ続く。
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