第一章 第22話 三家会議 その1
八月
現当主は、行方不明になった黒瀬
午前九時半を過ぎた頃、N市内にあるその
フロントグリルに、十字と
玄関近くの駐車場に、二台の車は停車した。
――最初に姿を見せたのは、四十代
それに
「ほんの一ヶ月前に来たばっかりなんだがなあ」
最初に車を降りた男が
彼の名は
ゆったりとした物腰と立派な
「はい」
と、一言だけ青年が答える。
彼は、
そこに、二台目の車を降りた男性と女性が歩み寄る。
「あいつは……まだいないよね」
「
「分かってますって」
何やら警戒している女性は、檜山
それをむっつりと
檜山家の長女と、現当主である。
――檜山家は、赤穂家の分家に当たる。
遥か昔に「
そして檜山家となった頃から、本家である赤穂家の
「それにしても……いつも思うが」
赤穂玄一が口を開く。
「車の色まで、
そう言って、黒瀬家の車庫の方を見る。
そこには、
正確にはただの黒ではなく、「
「あれ、私も欲しいんだよね」
「えー、でも
「うーん、そうかなあ」
「そうだよー」
「姉さん、言葉
「はいはい」
「大体、黒い車って威圧感ありすぎだもんね。乗っている人も腹黒そうって言うか――」
「腹黒いはひどいなあ」
「あ、
いつの間にか黒瀬白人が迎えに出てきていた。
と言っても、讃羅良たちがそれに気付かないわけはない。
本人がいるところで、
(……そう言えば、途中から変な車が
「皆さん、わざわざご
ぺこりとあいさつをする白人に、他の者たちも頭を下げる。
そんな中、讃羅良は
「白人さんがここに出てきたと言うことは……」
「おう、いるぜ。
「やっぱり……クソ
「どーもこんつは、クソ讃羅良お姉さまさんよお」
「いい加減にせんか」
「いてっ!」
白人の
二人とも大男だが、特にど突いた方は見上げる程に大きい。
「ごめんねー讃羅良ちゃん、毎度毎度うちのバカ息子が」
「いえいえ、
「おっ、分かるかい?」
「一ヶ月かそこらで、見て分かるほど変わるわけねえだろうがいでっ!」
ごすっと後頭部に今度はげんこつを落とした男が、
檜山家と同様に赤穂家の分家であり、現在は
頭を押さえているのが、
静岡県東部にある高校に通う、十八歳の男子だ。
「大拳さん、うちの娘こそいつも申し訳ない」
苦虫を
その横で静かに頭を下げる大海人。
「いやいや、先にちょっかいを出すのは決まってこいつなんですから。それにしても
再び無言でぺこりとする大海人。
「ホントだぜ。
軽口を叩き始めた拳心の斜め前に、讃羅良が瞬間的に動いた。
そのまま彼の
それを拳心は、
「おんやあ~?
「こんの筋肉ダルマが……」
「相変わらずえげつないとこ狙うよなあ。あ?」
「おいおい二人とも、こんな暑い中で
やれやれと言った顔で、
そこに
「そうそう。中はしっかり冷えてますから、とりあえず入りましょう。じきに
「来たようですよ」
そう言う光展の視線の先では、二台の真っ白な車がゆっくりと門を入ってこようとしていた。
玄一たちの車と同じくらい特徴的なフロントグリルに、バイエルン
「怖い人たちきたー」
「オレぁ先に中に入っとくかな……」
七人の視線を集めながら、二台の車は駐車スペースにゆっくりと
フローズン・ブリリアント・ホワイトの車体が
……かちゃり、と音がして、五人の女性と一人の男性が
「あら皆さん、外でお
「あ、いえ、ちょうど
白人が答えた相手は、
「暑いわ……白人さん、中に入っても?」
「ええ、もちろん」
次に白人に問い掛けたのが、白鳥
胸の下まで伸びた
太めの
絵になる美女、と形容しても異を唱える者は皆無であろう。
彼女は異例の事ながら、中学三年生の時点で母親である
狙っているのかどうか分からないが、彼女は純白のワンピースを
どこからどう見ても「お嬢様」という言葉しか浮かんでこない。
玄関にさっさと進んでいく麗と摩子の
「では我々も入りましょう。三家の皆さんは『
中から使用人の
◇
以下、今回の臨時会議に参集した者たちを列挙する。
カッコ内は現時点での満年齢である。
・
・黒瀬
・
・白鳥
・
・
・水神
※水神家は、赤穂家の分家であり、黒瀬家の護衛を
※この場にはいないが、水神家のさらに分家に
神代家は黒瀬家全体の警護を
・檜山
・檜山
・檜山
※檜山家は、赤穂家の分家であり、赤穂家の護衛を務めている。
・白華
※白華家は、白鳥家の分家であり、基本的には白鳥家全体の警護を
今日は事情があって白鳥
・季白
・季白
・季白
※季白家は、白鳥家の分家であり、白鳥家の護衛を務めている。
三女もいるが、今日は
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