第一章 第15話 結成
静岡
しかし、ただの大学生である彼らに出来ることは何もなく、講義が終わった
――その日も三人はいつもと同じように、遅めの昼食をとりながら玲のことを話していた。
そこに、玲の中学時代からの友人と聞く、
玲がまだいる頃から、讃羅良は突然彼らの輪の中に飛び込んできて、さして親しくもないはずなのに引っ
一時期、偶然に彼女と同じファミリーレストランでアルバイトをしていた慶太郎はともかく、迅と花恋は讃羅良が苦手だった。
特に、迅のことを憎からず思っている花恋は、その迅に
そしてその日、いつものように勝手に
――
◇
「……」
「……」
「……何? 今の……」
既に
三人はお互いの顔を見ながら、
とは言え、讃羅良は別に難しいことを言ったわけではないのだ。
――
ともあれ、その
「どういうことよ! 一体!」
――なかった。
「一体、あの子はどういうつもりであんなこと言ったんだ?」
「こう言っちゃなんだけど、ちょっと不謹慎じゃないかと僕も思った」
花恋は
目には涙さえ浮かべている。
「信じらんない……何であんな
既に午後三時を過ぎ、学食はそれほど混んではいない。
それでも、三人の取り乱した姿は人目を引いた。
「とりあえず
迅の提案で、彼らは食器を片付け、学食を
途端に彼らの身体を熱気が包む。
「
夏の太陽がまだまだ元気にギラつく中、三人は
「それにしてもなあ……」
そんな中、最初に口を開いたのは
「確かにあの子ってさー、ちょっと変わってるって言うか、わざと空気を読まないようなとこがあるけどさ」
どうにも
「
「まあ俺はお前ほど
迅も
「ちょっとむっとしちまったのも事実だけど、何つーか……
「何よ、あんたたち」
花恋が口を
坂を
「あんな子の肩を持つつもり?」
「肩を持つっつーかさ、
「
「
ポケットの中で原付の
「
「じゃあ何? 本当に玲が生きてるってこと?」
「いや、それは僕にも何とも……」
「でもよー、考えてみるとさ」
腕を組む迅。
「確かに上野原さんが生きてる証拠なんてねえんだけど、死んでるっつー証拠もねえんだよな?」
「う……死んでるとか言わないでよぉ……」
「あっ、ごめんごめん。俺が言いてえのはそういうことじゃなくてさ――何つーか、まだどっちとも決まってるわけじゃねえっつーか……」
「……迅の言う通りかも知れない」
慶太郎がはたと手を打った。
「僕らすっかり檜山さんの言ったこと、悪質な冗談だって決めつけちゃってたけどさ、考えてみればあの子がわざわざそんなことするメリット、なくないか?」
「単に性格が悪いだけじゃないの?」
「いやいや、そこまで
「じゃあよう、仮にあの子が言ったことが本当だとしてだ――何でそんなこと知ってんだ?」
むう……と三人とも押し黙る。
「っていうかさ、あの子……何者?」
「慶太郎、お前よく知ってんだろ? バイト仲間だったんだからよ」
「バイト仲間ったって、プライベートまでは知らないよ」
「私思ったんだけど、もし……もしもだよ? 玲が生きてるんだとしたら、それって朗報だよね?」
「そりゃまあ……」
「檜山さんに直接問い
「教えてくれないんだったら、こっちで調べるまでよね」
「……へ?」
「まさか……」
「そのまさかよ!」
花恋が指をぱちりと鳴らした。
「南雲花恋探偵団!」
「……」
「……」
びしりと迅と慶太郎を指さす花恋に、二人の視線が微妙に
(いつもながら展開が
慶太郎が心の中で叫んだ。
「な、何よ……」
「あのさあ、南雲さん」
「僕たち、一応成人してるんだしさ」
「どういう意味?」
迅が「マジでこいつ分かってねえの?」と言う表情で、
慶太郎は迷惑そうに視線を返すが、大きな
「南雲さんが何を言いたいのかは察したけど、そのネーミングはちょっと、ね」
「探偵団の何が悪いのよ」
「いや……悪いわけじゃないけどさ、何て言うかその、古いと言うかアンティーク調と言うか……」
「馬鹿ね。敢えてそういうの狙ってるんじゃないの。
「僕、そういうの
「いや、俺もよく知らん」
正直なところ「南雲花恋探偵団」の何がアウトなのか理解できない花恋だが、困り顔の二人を見て仕方ないとでも言いたげに肩を
「じゃ、『花恋とゆかいな仲間たち』で」
迅は思わず空を
「なあ慶太郎、俺もう降参するわ。南雲さん、俺、ゆかいな仲間一号でよろしく」
「迅、ずるくない? 大体、『○○とゆかいな』系もいい加減
「だからわざわざ狙ってるんだって。そもそもオリジナリティなんて今はどうでもいいの。分かった? 二号」
「はいはい……」
慶太郎は
大体、いくら日陰とは言え、これ以上アホな問答を続けるには暑すぎる。
(それに……僕だって知りたくないわけじゃない)
「で、要するに僕たち『花恋とゆかいな仲間たち』は何をすればいいわけ?」
「探偵団なら、もちろん調査に決まってるじゃない」
「あれ? 探偵団案はボツじゃなくて?」
花恋が言うには、「花恋とゆかいな仲間たち」という探偵団らしい。
「とりあえずは、檜山さんが一体何者なのかってとこからね。いい? 早速明日から動くよ!」
「まさかとは思うけど、俺たちずっと檜山さんに張り付くってんじゃねえだろうな」
「――そのつもりだけど?」
今度こそ二人は頭を抱える。
「いくら僕たち四年生でも、一応もうすぐ前期試験だよ? 檜山さんの
「私は知らないけど、ムダに顔の広い小田巻君なら何とかなるんじゃない?」
「ムダってひどくね? まあ理学部にも友達はいるけどさ」
「じゃあ小田巻君にその辺を探ってもらって、分かり
「……」
「……」
行動力の
――迅と慶太郎は、改めてその事実を胸に刻みつけることになった。
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