第一章 第10話 ベーヴェルス母子 その2
原因は全く分からないが、とにかくそれまで住んでいた地下都市に閉じ込められ、孤立したことを理解したベーヴェルス
最初こそ絶望に
◇
――それから二人は、生き残るために動き始めた。
まず水と食料の
それでも、数字上は
そして、地上へ脱出するために
不幸中の幸いと言うべきか、土が
もし壁に穴を開けなければならないような事態だったら、正直打つ手がなかっただろう。
地上に向かって穴を掘ることは、想像以上に困難なことだった。
何しろ、道具も何もないのだ。
使えそうなものと言えば、
そして――――
彼らの
しかし……どういうわけだろう。
――
起きてもあまり持続しないと言うように、魔法の
それでも……原因の
出来る限り魔法で土を柔らかくしてから、大まかな穴を
この
◇
――土を掘り始めてから、
アルカサンドラとエルヴァリウスは、昨日から何も口にしていない。
それにも関わらず、作業の終わりは
(もう……駄目なのかしら……)
アルカサンドラ――サンドラの心を
それでも、彼女はひたすら穴を掘り続けた。
彼女の全身は、土や汗で大変なことになっている。
最初の頃は、作業を終えた
そしてそれは、エルヴァリウス――リウスも同様だった。
母親が気力を振り絞って掘り進め、汗みずくの泥まみれになって帰ってきたら、彼の番である。
文字通り泥のように眠っているサンドラを気
(頑張んなきゃ……頑張んなきゃ……)
腰につけたか
――しかし。
果ての見えない過酷な作業の果てに、二人の心は折れかけていた。
◇
――作業開始から
アルカサンドラとエルヴァリウスは、廊下で横たわっていた。
意識はある。
しかし、部屋まで戻る気力すら奪われていたのだ。
二、三日前までは
時間の感覚も
「くっ……」
よろよろと立ち上がるリウス。
隣にいる母親の胸が、静かに上下していることを確かめると、彼は
力の入らない足をぺちぺちと叩きながら、掘った穴を
穴の
少しずつ崩れていく土を顔に浴びながら、リウスはひたすら掘った。
――すると、見慣れない物が土の天井から顔を出した。
(……ん? な、何だ……?)
白い、糸のようなもの。
手に取ろうと引っ張ってみると、それはぷちぷちと千切れてしまった。
(これは……
何かを
ふいに――土の抵抗が消えた。
(や、やった……!)
とうとう、彼の目の前に
――恐る恐る顔を出すと、そこには
そのように、リウスには見えた。
(か、母さんを……連れてこない、と)
ここで足を
母親に朗報を伝えるため、一歩一歩踏みしめるように、彼は進んだ。
「母さん!」
水分をしばらく
リウスは母親の横に
「母さん、開いたよ! 穴が」
「……え……」
もう、限界はすぐそこまで来ているように見える。
「ごめんね母さん、ちょっと大変だけど」
そう
「ぐうっ……」
成人女性の体重が、疲労
☆
「はあ、はあ、はあ、はあっ……」
――何と言う精神力。
一
一刻も早く
ずるっ。
「くっ……」
サンドラも意識はあるが、全身に力が入らない。
踏み出そうとした足が滑り、リウスの肩に大きな負荷が瞬間的にかかる。
「母さん……あ、あと一歩だよ……」
声にならない声で、彼は母親を
そして、
どさりと音がする。
(ふうう……よし、あとは僕だ……)
リウスは、穴から
(ぐうううっ……)
少しずつ彼の身体が持ち上がり、ようやく胸の辺りまで穴の外に出てくる。
(ううううううっ!)
ずるっ!
(うわっ!)
……最後の力を込めた瞬間――――
――――穴の
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