第一章 第09話 ベーヴェルス母子 その1
時は、再び――――
◇
「……ん?」
アルカサンドラ・ベーヴェルスは、小さな違和感を
――部屋が
「
「分からないけど、変な感じがしたわ」
「僕もだけど……」
しかし、
他にも特に異状を示すものは見当たらない。
そしてその内、妙な感覚はいつの間にか消え
「ま、いいか」
そう言うと、エルヴァリウス――リウスは読書に戻った。
もう何十回も読み、半ば暗記してしまった本を。
壁に埋め込まれた
しかし、アルカサンドラ――サンドラは嫌な予感を
(確認した方がいいわ。調べないと)
「リウス」
「なーに?」
「ちょっと母さん、
「分かった。いってらっしゃーい」
でも、そこがあの子のいいところ、とも。
サンドラは、
すると板の
足を外に一歩踏み出したその瞬間、彼女は再び違和感に包まれた。
◇
「駄目だ、母さん。こっちも行き止まりになってた」
「そう……」
がっくりと
それに答えるサンドラの
扉の外は、
そこまでは、いつも景色だ。
廊下を右に進んで角を曲がれば、本来は
しかし……そこにあったのは目の前いっぱいに広がる――
廊下を左に進めば、ベーヴェルス
それなのに、そこへ至る道は――
「くそ……
部屋に戻って来てから、リウスは寝台に座って
サンドラも、
(何が起こったと言うの……?)
こうなったきっかけは、恐らく最初の違和感の時だろう。
揺れを感じたのは、気のせいではなかったのだ。
(でも、ぼんやりとばっかりしてはいられない)
ひとしきり絶望感に
このままではいけない、とまだ立ち直れていない息子を呼び寄せる。
(私がしっかりしなきゃ)
「リウス、こっちに来て」
「……」
「母さんもあなたと同じ思いだけど、こうして
「……」
リウスが
彼に椅子に座るよう
「まず状況を整理しましょう」
「……うん」
「廊下はどちらも土で
「……うん」
「つまり、私たちの部屋は孤立してしまっているのね」
「……」
「これが何を意味するのかと言うと、このままじゃ死――ダメになるってこと」
再び頭を
そんな息子の背中を
「三つの大事なものが失われようとしているの」
「……三つ?」
「そう」
彼女は
「まずは
「……」
「次に、
「……少ないね」
「そうね」
持ち直してきたかしら、と少しほっとするサンドラ。
状況は何も変わっていないが、まずは気力を取り戻さないと何も出来ない。
「最後に
「何とかしないと」
「そう。何とかしないとね」
「……と言うことは――」
腕を組んで考え始めたリウス。
立ち直り始めた彼を、黙って見つめるアルカサンドラ。
「
「母さんもそう思う」
「大変そうだね……
「そうね。状況が変わっているけど、ここは
「十メルスか……」
何となくだが、いけそうな気がするリウス。
「二人で頑張れば、何とかなるんじゃないかな」
「そうね。何とかしないとね」
――サンドラは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます