第七章 第24話 決意
――グレゴリオ暦20XX年 四月十二日 木曜日
―2―
◇
「噓でしょ……」
その
隣りにいる
「残念ながら、本当のことなの」
――ここは職員室。
先ほどザハドから戻ってきた二人は、黒瀬に連れられてここに来た。
黒瀬は彼らに、昨日からの出来事について話す役目を買って出たのだ。
最初は
「嘘よ……だって私……まだ、何も……
山吹の両目から、涙がすうっと流れ落ちる。
「一体、何だってそんなことに……」
瓜生も続ける言葉がないようだ。
「大体、八乙女さんが
「分からない。
「はあ!? それをみんな信じたってわけ?」
「どうだろ。私はそんなこと有り得ないと思ってるけど……何かいろんなことを
「私、鏡さんたちに
山吹が立ち上がって言う。
「ちょ、ちょっと待って山吹さん」
「止めないで。私、我慢出来そうにない」
「僕も行くよ。いろいろ
瓜生も一緒に立ち上がる。
黒瀬は二人を身体全体で押しとどめる。
「お願いだから待って。二人とも」
「こればっかりは、黒瀬さんの言葉でも聞けないわ」
「……八乙女さんから、あなたたちに伝言があるのよ」
「え……?」
「僕たちに?」
「そうです」
黒瀬は八乙女から伝えられたことを、二人に語って聞かせた。
☆
「――そんな……機を待てなんて……」
「うーむ……」
「あの人たちをとっちめてやりたいのは、私だって同じ。でも
「何それ。教頭先生も?
「分からない。教頭先生については恐らく私たちと同じ気持ちでいてくれそうだけど、他の人たちとは全然話せてないから……」
「もし私たちと同じじゃないって言うのなら、敵だと思う」
「いや、山吹さん。気持ちは分かるけど、それだと
「どうしてですか!?」
山吹が瓜生に食って掛かる。
「
「それは……」
「そもそも彼らの目的が分からない。何のためにこんなことをしたのか不明な
「……」
山吹は瓜生たちの言葉を
「分かった。あなたたちの言う通りだと思う」
「そう」
「でも、私決めたよ。私は、八乙女さんを追いかける」
「ええっ……?」
「言うと思った。あなたなら」
黒瀬は
「悪いけど、八乙女さんがいないこの場所には何の
「本気なのかい? 山吹さん」
「ごめんなさい、瓜生さん。無責任かも知れないけど多分私は、ここでじっと時期を待つなんて出来そうもないんです」
「ふーむ……」
「黒瀬さんもごめんね。あなたにいろいろ押し付けちゃうようで、気が引けるところはあるけど……行かせてほしい」
「まあ私はね……八乙女さんにいろいろ
「ありがとう。ところで……校長先生は今、どんな?」
「……基本的にはそのままよ。お顔にタオルは掛けてあるけど、胸の包丁も抜いてない」
「そっか……じゃあこの
「結構
「だからこそよ」
山吹は続けた。
「ちょっと怖い気もするけど、だからこそこの目に焼き付けなきゃって思うの。それに……私の背中を押してくれた恩人だから、挨拶しないで去るなんて考えられない」
「分かった」
「僕もご一緒させてもらっていいかい?」
「もちろんです、瓜生先生」
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