第七章 第21話 暗躍

   星暦アスタリア12511年 始まりの月トゥセルナ 第一旬カウ・サーヴ 第八日目ビスガディーナ


   ――グレゴリオ暦20XX年 四月十一日 水曜日

   ――八乙女、療養九日目・帰校


   ―10―


    ◇


 ――八乙女のパーソナルスペースにて


 そこにはかがみ龍之介りゅうのすけがいた。


 八乙女やおとめが荷物をまとめたあと


 寝具やら何やらが散乱している中、鏡がランタンをかかげて見つけ出したのは、一台のスマホだった。


 八乙女には、最低限のものしか持ち出すことを許可しなかったので、筆記用具や飲みかけのペットボトルなどと一緒に残っていたものだ。


 そして、もちろんそれ・・は、八乙女が校長からたくされたものだった。


「これだ、これ」


 鏡は満足そうにそのスマホをひろうと、教室を出た。

 入り口には壬生みぶ魁人かいとが彼を待っていた。


 歩き出しながら、壬生が小声で問う。


「鏡さん、よかったんですか? 追放なんかで」

「あの場では、ああして決めるほかあるまい。勝手に殺すわけにもいかん」

「そうですが」

「それにな」


 鏡が不敵ふてき口角こうかくを上げる。


「ちゃんと対策はしてある。心配する必要はない」

「それならいいんですが。私としては、何としてもあいつには消えてもらわないと困るんですよ」


 ふ、と小さく笑う鏡。


「それにしても、君がそれほどまでに山吹さんにご執心しゅうしんとはね」

「ほっといてください」

「まあ好きにするといい。それよりこれからが大変だぞ」

「対抗勢力、ですね」

「そうだ」


 鏡は一層いっそう声をひそめて言った。


「当面は教頭と……黒瀬さんかな。厄介やっかいそうなのは」


「そうですね」


「それと……あの瑠奈とか言う、不気味な娘だ。何となくあの娘には嫌な予感がする」


「しかし……久我夫妻はこちら・・・側ですよ」


「分かっている。だが、あの娘を放置することは出来ん。いずれ何らかの対処が必要だろう。あの二人には悪いがな」


「なるほど」


「ともかく、第一段階にして最も困難なとうげえた。これから全体を掌握しょうあくしていかなければならん。頼んだぞ、壬生さん」


「任せてください。今日のあれ・・で皆、相当ビビッてるでしょう。せいぜい暴力装置として役に立って見せますよ」


「期待している」

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