第七章 第18話 兇猛
――グレゴリオ暦20XX年 四月十一日 水曜日
――八乙女、療養九日目・帰校
―7―
◇
ほんの一時間前に起きた、
その中で、
◇
「壬生さん、いい加減にしてください!」
「あなたは一体、何の権利があってまだ犯人とも決まっていない人に、そんな暴力的な態度を取るんですか!?」
「何だと?」
「壬生さん、落ち着き
「八乙女さんが朝霧さんと口論をしたと言う話は、他の人からも聞いているんですよ。ねえ
突然話を振られて、
鏡の顔を見て、
「は、はい……私もそういう場面を聞いたことが、あ、あります……」
母親の
一体、どんな感情が彼女の中で
「それがあった上で今日のこの
「それでも、決定的な証拠にはならないと思いますが」
と
「それにですね、橘さん」
鏡が言葉を続ける。
「私が開拓班で仕事を進める内に判明したことなのですが、彼は独断で
「背信行為、とは?」
「こちら――要するに我々のいた日本の知識や技術を、個人的な利益と引き換えに先方へ
八乙女の目が見開かれ、再び
壬生が彼の右耳を
「うるさいっての」
黒瀬が再び抗議しようとするのを、鏡は手で制して続けた。
「恐らくそのことについて朝霧さんに相談したところ、反対をされて口論に
「それは確かな情報なのですか?」
「もちろんですよ」
鏡は教頭の疑問に当然という風に答える。
「オズワルコスという人物から、そのような話を
その瞬間、外交班の
「オズワルコス
橘はそれ以上反論できず、言葉を
「で、でも……」
すると、
「私、八乙女先生がオズワルコスさんといる時に何度も同席してますけど、そんな
「そこですよ、上野原さん」
全てを
「八乙女さんとあと数名、
「た、確かに、聞いたことあります……けど」
「オズワルコス氏によれば、その、あー……何でしたかな、ギオ、リアラ?という方法でやり取りしていたらしいです」
「そ、そうなんですか?」
「ええ」
鏡は
「しかも恐ろしいことに、
今度こそ八乙女は、
そんな彼を、壬生は無言で殴り倒した。
「うぐっ!」
床に倒れ込む八乙女を、壬生は乱暴に引き起こし、
八乙女の鼻血で猿ぐつわがじわりと赤く染まる。
「暴れんじゃねえよ、この人殺しのクソ野郎が」
「ちょっと壬生さん、やり過ぎですよ」
純一の言葉に、壬生は全く悪びれる様子もなく言い
「いいんですよ、このくらい。こいつにはちょうどいいお
突然
星祭り最終日の一件についても
「壬生さん、そのくらいにしておきなさい。皆さんが怖がってるじゃないかね」
「ちっ……分かりましたよ」
鏡と壬生が一体どういう関係にあるのか分からないが、壬生はどうやら鏡の
「それで」
鏡は、改めてぐるりと周囲を見回す。
「確かに何人かの
「それでも!」
黒瀬が机を叩いて立ち上がった。
「決定的証拠がないのに八乙女さんを犯人と決めつけて、彼に一言の
「そのようなものは、何も?」
「だったら、八乙女さんに話させてあげてください。しかも、あんな暴力まで受けて……私は絶対にあなたを許しません。壬生さん」
普段の彼女から考えられないほど、
壬生はその視線を
「何で黒瀬さんはこいつに肩入れするんだ。こいつは殺したんだぞ? 朝霧校長を」
「だからそれが八乙女さんだと決まったわけじゃないでしょうに!」
「ほぼ決まりさ。それとも、もしかしてあんたも共犯ってわけか?」
「なっ!?」
「やめなさい! 壬生さん!」
橘教頭が
「あなた
「何ぃ?」
「やめなさい、壬生さん」
鏡が割って入る。
「君の気持ちも分からんでもないが、それ以上は我々の主張の正当性を
「……分かりました」
「それに、確かに黒瀬さんの言うことにも一理あるようだ。純一さん、彼の猿ぐつわを
「えっ、いいんですか?」
「ええ」
鏡が
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