第七章 第17話 混迷
――グレゴリオ暦20XX年 四月十一日 水曜日
――八乙女、療養九日目・帰校
―6―
◇
騒ぎの
時刻は午後九時。
ただし、
その横を
八乙女に
猿ぐつわを
誰一人として、彼を見ようとしていなかった。
異様な雰囲気が室内を満たしていた。
「皆さん、大変なことが起きてしまいました」
「朝霧校長が、何者かに
声を上げる者は一人としていない。
鼻をすする音のみが聞こえる。
「まだご
鏡は八乙女の姿を視界の
「
その言葉で、とうとう八乙女に視線が集まることになった。
彼の
それ以外の人物の
怒り。
恐れ。
戸惑い。
哀しみ。
憎しみ。
八乙女は声を上げることはしなかったが、それら視線を
どういう
――そんな中、壬生魁人がまず口を開いた。
「私は、正直この男を朝霧校長と同じ目に
そう言う彼の表情は、憎しみが形を
「あんな素晴らしい人を……私は絶対に許せない」
次に久我純一が発言。
「僕は……ちょっと信じられないですけど、もし本当に八乙女さんがやったのなら、
久我瑠奈が悲しそうに、
「一つ、いいでしょうか」
静かに
「私のように
「それについては、最初に発見した方に発言してもらいましょう。
「え……?」
「あなたが保健室に入った時の様子を、
「詳しくと言われても……」
それに対して、鏡は先を
「あ、あの……私は、校長先生の夕飯の食器を
「……そうしたら八乙女先生がベッドの横に立っていて、近付いていったら、その、校長先生の胸に、あの、ほ、ほほ、包丁が……」
「あなたは八乙女さんが刺すところを見たんですか?」
橘教頭が問い掛ける。
「い、いえ……でも、そうだと思って、怖くて、叫んで――しまいました」
「そうですか……それでは、彼がやったと確認したわけではないのですね」
「は、はい――」
「だったら!」
突然、御門芽衣が立ち上がり、八乙女を指さして声を上げた。
「どうして八乙女せんせーが、あんな扱いされてるんですか!? 犯人って決まったわけじゃないんですよね?」
「
鏡の答えに、御門が首を
「が、がいぜんせい?」
「この場合、一番可能性が高いと言う意味だよ」
「だからと言って――」
「それにだ」
壬生が立ち上がって言う。
「私は以前、朝霧校長とこの男が口論のようなものをしていたのを聞いた」
真っ赤な顔をして壬生を
「黙れよ」
そう言って壬生は、八乙女の頭をいきなり
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