第七章 第02話 壬生魁人の主張
――グレゴリオ暦20XX年 四月四日 水曜日
――八乙女、療養二日目
―2―
◇
「申し訳ありませんでした、校長先生」
「頭を上げてください、壬生さん。
「はい」
「そんなに硬くならないでください。ほら、座ってください」
「はい」
ピンと姿勢が伸びている。
「事のあらましは大体
少し考える様子を見せた後、壬生さんは口を開いた。
「今回のことで、いろんな方にご迷惑をおかけしてしまいました。それについては本当に申し訳なく思っています。今後のことと
「なるほど」
「その上で申し上げておくべきことがあります。私が先ほど述べた「みんな」の中に、
「それはまた……」
思っていたよりも真正面から来たものだ。
目の前の男の眼は、私をしっかりと
意志は固そうだ。
「あの男は、山吹さんに
「それは事実なのですか?」
「山吹さん本人から聞きました。あの男は、彼女が助けを求めていることを知っていて見捨てました。断じて容認できません」
「なるほど。あなたは無抵抗の八乙女さんを
「それは……」
ぐっ、と言葉を
さて、どう出るか。
「それは……そのことについては、やり過ぎたとは思っています……」
「私が
「危惧していること、ですか?」
「今後もし、我々の中で何らかの意見の
「まさか! そんなこと、私はするつもりは……」
「今回のことを
「うっ……」
まあここで言い切れると言われたところで、実際のところはその時になってみなければ分からない。
だからこそ、しっかりと
「あなたたち三人の関係性については、私が口を
「……はい」
「私が最優先するのは、二十三人の利益と安全です。そこには当然、あなたも八乙女さんも含まれています。必要があれば個人的な感情を
「……」
「どうですか? 壬生さん」
十秒ほどたっぷりと間を置いた後、彼は
「分かり、ました……」
「本当ですね?」
「はい……」
ひとまずはこんなもんだろうか。
「それさえ聞ければ、これ以上私から言うことはありません。お忙しいところ、お時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした」
「いえ……こちらこそ、ありがとうございました」
そう言って、
あの様子なら大丈夫だと、信じたい。
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