第七章 そして……
第七章 第01話 橘響子の報告
――グレゴリオ暦20XX年 四月四日 水曜日
――八乙女、療養二日目
―1―
◇
「――と、いうわけです。校長先生」
「一体、何だってそんなことに……」
ここは校長室。
先ほど私――
何とはなしにおかしな空気を感じてはいたが、
「釈放された
「うーむ……実際、八乙女さんは山吹さんに何を?」
「
事前に聞いた話だと、山吹さんと壬生さんは宿泊する場所が違っていたはずだが……。
「なぜ壬生さんはその場に?」
「本人によると、山吹さんを探していたそうですね。祭りの最終日を一緒に回りたかったとか……」
「特に裏の事情はなさそうですか?」
「裏、ですか? ……私が話を聞いた限りでは両者の
「そうですか……」
身も
面倒なことではあるが、それ自体は本来我々が
問題は、今後の事だ。
「八乙女さんの
「最初に申し上げた通り、命に関わるようなことはないそうです」
「不幸中の幸いですね」
「ええ。ただ気になるのが、彼は
「無抵抗で殴られていたんですか?」
「はい。壬生さんも山吹さんも同じことを言っていますので、確かなことかと」
「ふーむ……」
彼は
その
「どうしたもんですかね……」
私の気弱な疑問に、橘さんが答える。
「少なくとも、ここでは場所的に、互いに
「本人たちのこともそうですが、周囲への影響はどうでしょうね」
「今回のことは、既にザハドに行った人たち全員が知っています。
「それはそうでしょうね」
気になるのは子どもたちのことだ。
教員同士が殴り合いの――合い、ではないか――ケンカをしたという事実をどう受け止めるか。
「校長先生、私の考えを述べてもよろしいですか?」
「はい、もちろん。お願いします」
「私が思うに、結論としては
「家族……」
「はい。家族同士のいざこざなど、どこの家庭にも多かれ少なかれ存在するものですから、
「なるほど」
「何より今までが出来過ぎだったのです。この世界で生きるという共通の目標のためにはケンカなんてしている
橘さんの言うことは、いちいちもっともに思える。
つい校長目線、教師目線で見てしまうのは、いいことばかりではなさそうだ。
まあしかし、暴力に訴えるようなことについては、人として、この集団のリーダーとしてなあなあにしてはおけない。
しっかりと釘を
「ありがとうございます、橘さん。
「
「いえいえ、とても重要な
「分かりました」
そう言って橘さんは静かに部屋を出て行った。
ぱたりと閉じられた
八乙女さんが戻り次第、伝えようと決心したこと。
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