第六章 第33話 星祭り 最終日 ―4―
人間関係が、ここにきて何だかいろいろこじれてきて、俺は本当に困っている。
それでも、いろいろ考えた結果、出来ることは何もない! と。
まあ正直なところ、どうしたらいいか分からないだけなんだが、分からないんだから致し方ない。
どうしようもないのだ。
とりあえずはリィナから説明を受けた、目先の「祭りの準備」とやらに専念することにしよう。
◇
という訳で、
これは基本的に各家庭や食堂、店舗などで作るんだそう。
「こんな、感じ……か?」
小指の
――そうそう。
何とこの地には「ギムピード」と言うものが存在するのだ。
直訳すると「魔法の石」なので、一応それっぽく「
まあほとんどそのまんまの意味だけど。
見た目は深い紫色の……ガラスのよう。
ちょうど透明な
どこかで見たことあるなーと思ったら、あれだ。
大きさはちょっと違うが、代官屋敷で見た、あの照明の中に転がっていた小さなやつだった。
「出来た!」
が、ペルにダメ出しを食らう。
要するにこれは、クリスマスツリーの
それを、一人当たり十個ほど作る。
別に数の制限はないのだけれど、ある理由から多すぎても大変なんだそうな。
ペルやグリッドたちは当然のことながら慣れたもので、あっという間に既定の数を作り終える。
リィナもなかなかに
流石だ。
俺たちの中だと意外と言うか、
スピードはそれほどでもないけど、出来上がりが
次に上手いのが
残念ながら俺は、多分一番ヘタクソだろう。
団子と言うより、小型の
いいのさ。
まあそんなこんなで、それぞれノルマを達成したところで表に出る。
周りを見ると、俺たちと同じように団子を
(かねがなったらすきなところにかざって。でも、なるべくうえにじゃまになるものがないところがいいよ)
(木の枝なんかはどう?)
(いいけど、あんまりほそいのはだめ。ふとめのえだのうえにおくかんじなら)
(なるほど、分かった)
リィナからのアドバイスを仲間に知らせる。
「えーっと、もう少ししたら
「好きなところって、ホントにどこでもいいの?」
「いいと思うんだけど……悪い、ちょっと待って」
芽衣の疑問を聞いて
いや、
(リィナ)
(なーに?)
(飾る場所って、本当にどこでもいいのか?)
(うーん……)
何やら考えてるな。
もしかしてダメなのか?
(ほんとはびっくりさせたかったからなあ……ないしょにしときたかったんだけど、うまくいかなかったらもともこもないもんね)
(そうだよ。最低限必要なことは頼む)
(わかった。じつはね、このおだんごがそらにうかんでくの)
(! マジで?)
(
(すごいな。ってことは、浮かぶのに邪魔になるようなところはダメってことだな?)
(
「えーと」
俺は興奮気味に言った。
「この小麦
「ええっ!」
「マジで!?」
「うそー!」
おうおう。
つんつんだった山吹先生も思わず反応してるじゃんか。
ま、確かに驚くわな。
何か一番大人なリアクションなのが天方君ってのが、何とも。
彼は、黙ったまま目だけ大きくしてる。
「ホントみたいですよ。だから、上に
「どうなってんの? このお団子」
「そう言えば、特別な魔石だって聞きましたね」
「そうらしいです」
純一さんの言う通り、この団子に使われている
星祭りのちょい前の頃に
「それで、これはもう伝えてあることですけど、もう一度確認のためにね。この小麦団子は五分以内に飾らなきゃならないそうですから、そこんとこもよろしく頼みます。飾り終わったら俺に言ってください。
(わたしもてつだうから)
(たのむよ)
この不思議なお団子は、魔素を通すことで動き始めるらしい。
物理的に動くわけじゃなくて、
バッチファイルとかシェルスクリプトみたいなものかな?
五分以内でってのは、町中の団子をある程度シンクロさせる
――ちなみにだが、エレディールに時間の「
少なくとも、日常生活で使われることはほとんどないみたいだ。
砂時計のようなものがあるわけだから、きっと
ならば、どうして「五分以内」と言う指示を俺たちが理解できたのか。
その理由は……「分」を使わずに、約
――「ナディス」と言うのが、それだ。
エレディールでは、一ヶ月を「月」じゃなくて「
日本でも「
で、ここにはそれ以外に分ける言い方がない――つまり「週」という概念がないのだ。
日本人の感覚では、ちょっと違和感が
ひとかたまりが十日もあると、ちょっと長すぎるように思う。
そこで、この「ナディス」らしい。
エレディールの人たちは、
元々、一旬の折り返しを意識するために始まって、今でも続いてるらしい。
その爪磨きの、爪一枚の処理にかかる平均的な時間が、「ナディス」なのだ。
意味は多分「爪一枚」を表す「イシナド」が変化したんじゃないだろうか。
銀座を「ザギン」とかみたいに、イシナドを「ナドイシ」って――――違うか。
まあそれはともかく、つまるところ俺は五分以内という意味を、リィナから「五ナディス以内」と指示されたわけだ。
文化が違うと、言い回しもいろいろ違って面白い。
元の世界の――と言っていいのか分からんけど、マレー語を話す地域には「ピサンザブラ」って表現があるらしいしね。
これは「バナナを食べる時の所要時間」で「約二分」だそうだ。
カーン……カーン……キン……キン…………
――おっと、鐘が鳴った。
俺たちは、山風亭周辺のよさそうな場所に行き、こねこねと小麦団子をセットし始めた。
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