第六章 第28話 星祭り 第四日目 ―1―
――
――ある日、
――ミラドは彼を
――父よ、
――そう言って主神の
――
――我は去り、そなたたちをこれから見守る
――ギードスはミラドに、
――しかし、ミラドはゆっくりと首を横に振って言いました。
――
――もし我らが
――
――しかし、ギードスの長女であるウーティアだけは、お隠れになったまま戻ることはありませんでした。
◇
(どうしよう……)
迷子になってしまった。
二十二歳にもなって、大学生なのに。
まさか、こんなにすごい
いやいや、いくら私だって日本だったらどうにでも出来るし。
でもここは言葉は通じないし地理も分からない。
一応、私も外交班に入って、それなりにエレディール共通語を勉強してはいるんだけど、元々外国語ってあんまり得意じゃない――っていうか、はっきり言って苦手。
国語は結構好きなんだけど。
読み書きはそれなりに出来ても、聞いたり話したりとなるとお手上げという、典型的なアウトプット不足の私だ。
もう少し早く、外国語の学習指導要領が
――いやいや、今は英語なんてどうでもいい。
それよりこの場を何とかしないと。
ここはザハドの中心部にある、結構大きな広場だ。
今日の午前中、ここで演劇があるって聞いて、代官屋敷に泊まっていたみんなで歩いてやってきたところ、昨日までと打って変わってすごい
軽く周りを見渡してみても、見知った顔はない。
どうしよう。
こういう時に
しょーがないから、向こうに見える
――それにしても。
改めて見ると、人の数が本当にすごい。
広場の
まだ営業はしてないみたいだけど、
一応、この星祭りの内容とかそれにまつわるお話みたいなのは、お屋敷で聞いた。
私たちは外部から来たお客さん扱いをされてるからか、ちゃんと朝昼晩と毎食しっかり頂いてるけど、普通は一日目から絶食に近い状態なんだそう。
今日だって、演劇の
あのたくさんの屋台は、きっとそのためのものなんだろう。
あーあ。
ザハドに来るのは初めてだったし、しかも星祭りなんて何かいい感じの名前のお祭りがあるって聞いてたから、ものすごく期待してたんだけどなあ……。
街並みとかやっぱり外国みたいだし、お屋敷もすごく
ご飯はちょっとしか食べちゃだめとか、昨日なんか外に出ちゃいけないとか、はっきり言って信じらんない。
だから今日の演劇はちょっと楽しみ。
でもきっと言葉が分からないから、面白さも半減なんだろうな。
八乙女先生がいれば、解説してくれたりするかも知れないのに……。
――八乙女先生。
まず、
でも山吹先生は、その気持ちに
それを聞いた時、私は何とも言えない気持ちになった。
自分の気持ちに名前を付けられない経験なんて、初めてだった。
そう言うの、漫画や小説では知ってたけど、まさか自分で体験することになるとは。
それで、
でも壬生先生的にはそんな八乙女先生が気に食わなくて、時々
私は見たことないけど。
だからあの時、うどんの
その
そして私も関係者かもって言われた。
その三人の関係に割り込む存在じゃないかって。
――要するに、私も八乙女先生のことが好きなんじゃないの? って言われたのだ。
その場では何とか言葉を
それは確かだ。
大学では仲良くしてるグループの子たちもいるけど――あの子たちにはそう言うの、あんまりピンと来ない。
――彼ら以外の大学の友達も、教育実習に行っている子は多かった。
と言っても、私はちょっと事情があって他の人たちより
私の実習が
結局参加できたのは五人だけだったけど、私以外の子の
一番多かったのが、時間のことと指導案のことだった。
まあ私としてはうんうんと
ある友達が「この仕事の大変さを知ってもらいたいから
私はどうしてもその先生の言葉に納得がいかなくて、週明けに出勤した時、八乙女先生に相談してしまった。
八乙女先生は「いろんな考えがあるから」って前置きしてから、こう言った。
働いていれば想定外の大変さを経験することは誰でも、どんな仕事でもあるし、何かの
そもそも困難を
だから、人工的に作った大変さをわざわざ
――さらに八乙女先生は、こうも言ってくれた。
初めて学校現場を体験する人に、完璧さなんて求めていない。
自分が大事だと思うのは二つ。
どうやったら授業の目的を達成できるかと言うことと、どうしたら子どもたちから信頼を得られるのかということ。
完璧に出来ないことを手抜きの言い訳にしたらいけないと思うけど、とにかく君は頑張ってるし、その方向性も間違っていないから、思った通りにやるといい。
もちろん、子どもたちにとってはどんな教育も
だけど、仮に失敗したってそれすらも、子どもたちの
フォローと責任は俺に任せてくれ、と。
こう言ってやれる俺は、実習生に恵まれたよ、とも。
私は本当に嬉しかった。
この人が私の指導教諭でよかったって、心の底から思えた。
きっと、私が八乙女先生に特別な感情を
でも……それが黒瀬先生たちが言う「好き」かどうかは、自分でもよく分からないのだ。
それに――――八乙女先生の方には、きっとそんな感情なんて……。
何だろ。
何か急に
「八乙女先生……」
「どうした?」
「ひぐっ!!」
「うおっ!」
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