第六章 第17話 憂い
図書コーナーで
少しヒートアップし過ぎか? と思った俺は、さながらレフェリーのよう介入。
注意事項を言い渡してから、再び、ファイッ!
☆
――しかし三人とも、さっきの俺の介入で
多分芽衣
俺としては口ごもった様子の聖斗を
正当性をアピールしたいのか、俺たちを何かの証人にしたいのか、とにかく何かを聞かせたいわけだ。
とりあえずは、
「それで? 聖斗。ちょうどいいとか言って、やっぱり何か言いたいことがあるみたいだけどさ。まずはあたしたちを無視する理由から言いなさいよね」
そう言われた天方君は「きっ」と芽衣を
しかし、ただの一瞬でも
「ちょ……マジで一体何なの? あたし、あんたに何かした……?」
と
芽衣のやつは、本当に、何も気付いていないのだ。
それはある意味、無関心と
もちろん芽衣にとって、四歳年下の小学生の男児など、仮に彼女の恋愛の
もし俺が天方君の立場だったとして、好きな女の子に「二度と関わるな」なんて言うとしたら、どういう気持ちからのことなのか。
しかも、その女の子の気持ちが――本当のところはどうであれ――自分の親友の方に向いていると感じてしまったら。
あくまで俺の推測に過ぎないけど、どちらも自分から遠ざけたくなる気持ちはよく分かる気がする。
――ちなみに、
俺が思うに、「好き」の反対はあくまで「嫌い」であり、無関心ってのは、
例えるなら、ボクシングでも何でもいいけど、中央のリングの赤コーナーが「好き」、青コーナーが「嫌い」で、観客席が「無関心」って感じだろうか。
まあ言葉の定義の問題だろうから、俺の考えでは、ってことで。
「先に言っておくよ。
「!」
天方君の言葉に、今度こそ芽衣の表情は
「俺は……どんなにせっつかれても、理由は言わねえ。言う気はねえ」
「聖斗……どうして……」
「一つだけ言うとしたら、別に
「……う……あ……」
普段なら立て
天方君の
「それと……朝陽」
「な、何?」
突然
「お前もな……別に悪くねえよ」
「え……?」
「でも、これ以上お前たちと一緒にいると、ダメなんだよ。俺がダメになる」
「ダ、ダメにって、どういうこと?」
「だから、頼むから俺に近づくな。そんだけだ」
「あ……え……」
「せ、聖斗、もっとちゃんと説明してよ」
「……」
「そんなんじゃ僕、納得できないよ!」
「……お前は、満足だろうな」
「え?」
天方君が神代君の眼を
「このへんてこりんな
「……」
「そもそも何で俺たちは、こんな
ちょっと待て。
いじめ?
それに……この二人が、転移した理由?
そう言えば、と俺は思い出す。
あれは――八か月以上前、こっちに転移してくる直前。
ちょうど職員会議が始まろうと言う時に、
本当なら児童は全員、集団下校している
確か……何か聞いてもらいたいことがあって、直接職員室に
直後に転移が起こって正直それどころじゃなくなったから、その二人が
「場合によったら、何も解決してないのかも知れないぜ?」
「……」
「……まあいいよ。それは今回のこととは関係ねえし。ちょっと言ってみたくなっただけだから」
「なに? ……二人とも、何の話をしてんのよ……?」
しかし、天方君はそれに全く取り合おうとせず、「じゃ、そういうことだから」と言い残して、俺の方に歩いてきた。
「八乙女先生」
「ん?」
「ちょっと一人になりたいんで、お昼まで
「……そうか、分かった。どこ行くか知らないけど、気を付けてな」
「はい」
そう言って、天方君は静かに図書コーナーを出て行った。
芽衣と神代君は、無言のまま立ち尽くしている。
上野原さんが
「八乙女先生、結局どういうことなんですかね。それに……いじめがどうとか言ってませんでしたか?」
「うん……話の流れからすると、転移前に神代君がいじめに
生徒指導主任としては情けないことではある。
ただ、言い訳をするわけじゃないが、どれほどアンテナを高く広く張り
その
「それに、もう一つ気になることが」
と、山吹先生。
「転移していじめから逃げられたって言うのは何となく分かるんですけど、何も解決してないかもって……どういう意味なのかしらね」
「んー……それがいじめのことを言ってるのかどうかは……。そもそも二人が職員室に相談に来た理由が何だったのか、まだ分からないからね」
「本人に聞ければいいんですけど、ね……」
二人の方を
芽衣は
神代君は青い顔で立ったままだ。
俺は立ち上がり、二人に近づいて声を掛けた。
「芽衣、神代君。二人ともいろいろ思うところもあるだろうから、今日の仕事は終わりにしときなよ。俺たちは続けてるから、気を
芽衣は何も答えない。
神代君は小さく
「あれこれと彼を問い
芽衣は突っ伏したまま。
神代君は、もう一度
――いつか、セラウィス・ユーレジアでリッカ先生に
三人の
(これだけで済めば、まだましなのかも知れない)
一度
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