第六章 第15話 困惑
そしてその日の午前中、外交班の作業場所である図書コーナーにて。
とにかく、会話が一切ない。
作業場所も遠く離れている。
態度としては聖斗は
分からないことは普通に質問してくるし、バリバリと作業をしてもいる。
ただし、朝陽との会話は明確に
そして
一方、朝陽の方は可哀想なくらい
聖斗とはもちろん、誰とも話をしようとしていないのだ。
そして、芽衣は……。
彼女も二人の様子に
外交班の普段の雰囲気は、それほど
瑠奈が話さないのはいつも通りとして、芽衣たち三人は時々冗談を言い合ったり、軽く
それなのに今日の二人は、視線を合わせるどころか、作業場所からして離れてしまっている。
そして
積極的に視線を
実のところ、芽衣には芽衣で
言うまでもなく、
涼介と話して読んでみる気になった澪羽からの手紙に、芽衣は自室で一人、目を通していた。
そこには、芽衣の気持ちに気付かず無神経な行いをしたことへの
自分の心を激しくかき乱したことについて、芽衣はまだ澪羽を許すつもりはなかった。
昨日も、澪羽とは
それでも、手紙を読み終えて、芽衣は自分の心が少しだけ軽くなっていることを認めた。
そこに来て、今日のこの状態である。
まさか自分の
◇
「
「どういうって……何が?」
外に引っ張ってこられた理由を朝陽は何となく
「何って、決まってるでしょ? あんたと
「……」
「あんたたち、朝から一回も目を合わせないじゃない。ケンカでもしたの?」
「うん……そうみたい」
「はあ?」
「そうみたいって、どういうこと? 原因は何なの?」
「……分かんない」
朝陽は、おとといのあの夜からずっと考え続けている。
自分の何が悪かったのか。
何が聖斗の
可能な限り会話の
ただ、聖斗が芽衣のことを好きなのかな、ということは朝陽も何となく分かっていたので、あの森の帰り道でのことが関係してるだろうとは
それにしても、聖斗があそこまで怒るのを見たのは、初めてだった。
これまでも何度か小さな
それも熱いのではなくて、触れたらあっという間に
このまま問い詰めても
「まあ、あんたたちだってケンカぐらいするだろうけど」
「ええ……それ、芽衣さんが言う?」
ここ最近の芽衣と澪羽の様子を見ていれば、何かあったのだろうということぐらい朝陽でも
思わぬ反撃に、芽衣が若干
「あ、あたしたちのことはいいの。関係ないでしょ?」
「それなら僕たちのことだって、芽衣さんには関係ないじゃん」
「関係あるわよ!
「……」
「そのくせ、せんせーたちとは普通に話すって何? 明らかにあたしとあんたが原因だって言ってるようなもんじゃん」
「……」
「あんたが分からないってんなら、直接聞くよ。その方が手っ取り早いでしょ」
朝陽は
火に油を
「それは……やめといた方がいいよ」
「何で?」
「……言われたんだ。『
突然飛び出した強い言葉に、芽衣は一瞬
「何それ……どういうこと? あたし、あいつに何かした?」
芽衣は混乱していた。
彼女を「芽衣
好かれてこそすれ、まさか嫌われてるなどとは夢にも思っていなかった。
「あたし……確かめてくる……」
そう
止めようかどうか迷う朝陽。
しかし、聖斗の心を知りたいのは、彼も同様だった。
最悪の展開を予想しつつも、朝陽は芽衣の
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