第六章 第03話 再編
鏡先生の提案で開かれた全体会議。
それは班編成の見直しと再編を求めるものだった。
その中で、対外的な交渉を主な仕事とする班の新設が唱えられ、その適任者として突然名指しされた俺。
俺は唐突な
☆
「ぶっ」
――俺は、これまでずっと不思議に思っていたことがある。
例のあの、思いがけないことを見たり聞いたりして驚いて、飲み物をブフォッと吹くあれだ。
まあマンガ的表現として何の気なしに見てはいたんだけど、中には対面にいる人の顔面に向かって、消防ホースの放水が
そういうのを見る
だけど今、俺はその答えを身を
驚く。
息を
一緒に口の中の物も吸い込まれる。
なるほどこういうことか、どちらかと言うと吹き出すより吐き出すだから「ぶっ」より「がはっ」だななどと、
ならばなぜ、俺は「ぶっ」となったのかと言うと、これは口じゃなくて
より正確に表現するなら「すぶっ」の方が近い。
「ちょ、ちょっと八乙女先生、大丈夫ですか?」
幸い、お茶はちびちびと飲んでいたので、正面で目を
俺の鼻から
それにしても鼻からお茶を
「そ、そんなに驚くことかね……」
俺の
「い、いえ、ちょっと、待ってください」
俺は机の引き出しを開け、中からポケットティッシュを取り出すと、手早く自分や机の上の後始末をする。
ようやく落ち着いたところで、俺は立ち上がった。
「大変失礼しました。えーと、鏡先生がさっき
周囲を見回す。
さっきくすくす笑っていた
「俺が最適任かどうかはともかく、一番彼らと接しているのは確かに自分
俺は
逃げんなよ? と。
すん、とすまし顔の彼女がどう思っているのか、残念ながら分からない。
教頭先生が、黒板にかっかっと何か書き始めた。
・食料物資班の増員
・外交班|(仮)の新設
・調査班の今後について
「複数のトピックが上がったようなので、
相変わらず仕切りが上手い。
「はい」
と早速、
「僕はさっきも言ったように、班として食料採集を続ける必要はないと思ってます。投入する人員や時間に比べてリターンが少な過ぎるし、自給手段として頼りにするには不安定に過ぎます。いっそのこと、調査班は解体して他にリソースを回した方がいい。ただ、
「賛成です」
「私も賛成です」
「賛成」
同意する声があちこちから上がる。
「調査班はひとまず、その使命を終えたと考える
「はい」
「調査班の扱いについては、私も廃止でいいと思います。ただ、これまで
隣りの上野原さんが
「えーっと、要するにですね、調査班はなくしても薪を入手する仕事は必要だと思うので、どこかの班に割り振るか、専用の班を作った方がいいんじゃないかってことです」
そう。
これまで料理はほとんどIHクッキングヒーターを使っていたので、薪の需要はあまりなかった。
しかしそれも、かまどや石窯が出来てからはそうはいかなくなった。
そして、湯殿も当然のことながら結構な量の薪を必要とする作りなので、これまでのようにのこぎり一本持ってギコギコだけじゃ、
――でも、風呂を作ったからには、そこにだって抜かりはない。
「薪の話が出ましたので、私からお伝えしたいことがあります」
教頭先生が話し始めた。
「詳細は
おー、と声が上がる。
ザハドではあまり見かけなかったが、隣町のイストークにはあちこちに水車小屋があった。
恐らく小麦などを
もちろん、俺たちだけじゃ資材も技術も足りないだろうから、リューグラムさんたちの協力が不可欠だった。
「ですから、今すぐにではありませんが、そちらの仕事に従事する班、もしくは仕事の割り振りが必要ですね」
と言って、教頭先生は黒板に新しく「伐採と薪づくり」という項目を書き足した。
「他にはどうですか? ……では、調査班はとりあえず終了ということでよろしいでしょうか」
「異議なし」
「いいと思います」
これで、まずは俺の所属していた調査班はお
今だからいう訳じゃないけど、なかなか楽しい仕事だった。
リィナたちと出会うきっかけにもなったことだし、成果としては充分だろう。
・調査班の今後……廃止
「では、私から班編成の見直しを提案した、もう一つ理由について述べさせてもらいたい」
「どうぞ、鏡先生」
「では」
再び鏡先生が話し始めた。
「施設管理維持班についてです。これまでトイレやゴミ捨て場、長大な水路や道路、かまどや石窯、風呂等、他の班と同様に多大な
カイジ班副班長の教頭先生が答える。
「現時点ではあと一つ、炭焼き用の
「なるほど。そうすると、カイジ班の仕事もぐっと減ることになりますな。もちろん、
・薪調達の割り振り
・施設管理維持班の人員最適化
「決めるべきことが、明確になってきたようです。それでは班の統廃合と人員の再配置を具体的に行っていきたいと思います」
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