第五章 第30話 学校訪問 二日目 その10
「ねえ、こんなところに連れてきてどうしたってのよ」
時刻は、日付が変わるまであと一時間ほどというところ。
校舎北にとめてある車の
「うん……あのね、芽衣ちゃん」
「うん」
「私、芽衣ちゃんに嫌われたくないから……自分から言うね」
「え、何? 何か聞くのが怖いんだけど」
自分から言うと言いながら、なかなか切り出せずにいる澪羽。
そして、
「さっき、図書コーナーでみんなで遊んだよね?」
「え? あー、うん」
「その時、
「朝陽が?」
「うん」
いきなり朝陽の話?
話の
この子は一体、何の話をしようとしているんだろう。
「いろいろしゃべってたから、どのことか分かんないよ」
「そ、そうだよね……ごめん」
芽衣の言葉の中に、
こんなまどろっこしい言い方をしている――自分が悪い。
「別に
「うん、そうだよね。分かった」
「私も朝陽君とちょっと似てるの。そして……
「……はぇ?」
結論からとは言ったが、
因果が
「ご、ごめんね。ちゃんと説明するからね」
芽衣の
「あのね、さっきの朝陽君の言ったことって言うのは、『何となくぼんやりと分かる気がする』っていうやつなの。聖斗君がこっちの言葉がちんぷんかんぷんで分かんないって言った時に」
「あー……、確かにそんなこと、あったかも」
「で、似てるって言うのは、私と瑠奈ちゃんは、リィナやシーラの言うことがもっとはっきり分かるってことなの」
「……え?」
朝陽と、澪羽と瑠奈。
それが意味するところを、芽衣は理解した。
「もしかしてそれって、
「うん」
ちくり、と芽衣の胸の奥が痛んだ。
――
しかし今のところ、発動に成功する
聖斗も同様らしいが。
「ふーん……で、それってどんな感じなの?
「テレパシーって私はよく分からないけど、もしかしたら似てるのかも。あのね、私の胸に『ノック』みたいなのが来たの。こんこんこん……って、リィナから」
「胸に……ノック?」
「うん、変だよね。でもそうとしか言えないの。それで、私がドアを開けてあげるような気持ちになった
「……」
沈黙を
「伝わってくるのは確かに
「……そうなんだ。うん……そこまでは分かった。で、あんたの方から話しかけるみたいなことは出来たの?」
「出来た……と思う。『リィナですか?』って聞いてみたら『
「――そっか……」
そのまま芽衣は黙り込んでしまった。
自分の中にいろんな感情が混ざったまま
……どれも素直に口にするには、芽衣にとってなかなかに困難なことだった。
彼女の沈黙をどう
「シーラとも話せた。でもあの子はこう言ったの。『他の人がいるところで
「なるほど……それはでも、分かる気がするね」
「うん、私もそう思う。だから、芽衣ちゃんにはちゃんと話そうと思ったの」
芽衣は、澪羽がわざわざこんな風に打ち明け話をした理由が、すとんと
――この子は、私を傷つけたくないと考えたんだ。
気付けば、きっと
そうすればあのせんせーのことだから、分かったことは恐らくみんなで共有しようとするだろう。
そうやって、他の人から事実が伝わるよりは、自分が話した方がショックが少ないだろうって。
――私を……見
「
――自慢、かな?
「そうだ。一番大事なことを言ってなかった。あのね、この、えーと……取りあえず芽衣ちゃんが言った
澪羽は
芽衣の沈黙がどんな感情の表れなのか、分からなかったのだ。
その不安から彼女にしては珍しく
――あたしの心を、勝手に
普段だったら「勝手に見ないでよー」程度で済んだことだったのかも知れない。
しかし今は、
芽衣の心の
しかしそれは、もっとずっと大きくて
「……め、芽衣ちゃん?」
背中を向けたまま、一言すら発しない芽衣に、恐怖すら感じて澪羽は呼び掛けた。
すると芽衣はくるりと笑顔を向けて言った。
「ありがとね、澪羽。わざわざ教えてくれて」
「え、あ、う、うん」
「あたしのことを、
「うん……」
「あたしも
「あ、うん。聞いた」
ごく
初めは全然出来なくても、練習を重ねて
「で、話はそれでおしまい?」
「うん、そうだけど……」
芽衣は再びにっこりと笑った。
「そっか。じゃあそろそろ戻ろうか。明日お客さんたちを見送るまではきっと忙しいだろうからね」
「う、うん……」
そう言って
――言い知れぬ不安を感じながらも、澪羽は
◇
翌日午後十時ごろ、ザハド勢一行は学校を
来た時と同様に、
最も望まれた乗用車については、さすがに
ザハド勢からも、大量の食材や建材等がもたらされている。
また、約一
ぜひ
こうして、
――しかしその裏側では
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