第五章 第26話 学校訪問 二日目 その6
「
案内するのは、校舎西側に新たに現れた建築物。
即ち、「
はっきり言って見た目はちょっとシンプルな掘っ立て小屋だけど、脱衣所、洗い場、三畳ほどの広さの
まあ作りはかなり甘い。
小さな
不都合が出たら修理すればいいのだ。
――最初のお客さんは、四人。
リューグラムさんとリンデルワールさん、あとそれぞれの従者の人が二人。
身分的に
次に男性の護衛三人と、エリックの四人。
最後に、女性の護衛二人とエリィナさん、リィナとシーラの計五人。
この九人は、職員室で順番待ちしてもらっている。
――俺と
「いやあ、何とか間に合ってよかったね」
瓜生先生が嬉しそうに言う。
「
「届くのにずいぶん時間がかかったけどね」
風呂を作るに当たっての課題はいろいろあったけど、お湯をどうやって作るかってのが一番大変なところだった。
ドラム缶でもあれば、シンプルに
あれこれアイディアを出し合った末、
この方式の最大のネックは、その細い金属の管を入手できるかどうかというところだったんだけど、最初にザハドを訪れた時に、まあダメ
ちなみにもし入手できなかった時には、
「しかし……使い方とか大丈夫かなあ。
「うーん、一応説明はしてありますけど……正直なところ、ちょっと心配ではありますね」
「サウナなんだって? エレディールは」
「国としてそうかどうかは分かりませんけど、少なくともザハドはそうですね。セラウィス・ユーレジアにもありましたし、町の中にも
「シャワーなんかはどうだった?」
「そう言えば……セラウィス・ユーレジアでそれらしきものを見ましたね」
俺たちの計画でも、
「サウナもいいよねえ。あの
「お、いいですね。カイジ班に
瓜生先生が出来そうって言うなら、結構期待できるな。
この人は、割と何でも作っちゃうから。
――それにしても……風呂と言えば、俺にはひとつ疑問がある。
「ねえ、瓜生先生」
「ん?」
「マンガでもアニメでもいいんですが、風呂の場面になると『カポーン』って
「え? ……んー、まあ言われてみれば、そうだね」
「あれって……何の音なんですかね」
「ええ?」
ずっと、分からないんだよなあ、これ。
最初は、オケか何かがどこかにぶつかって鳴る音かと思ってたんだけど、露天風呂の場面でも音がしてたし、何なら
「鹿威しって、カポーンなんて音はしませんよね?」
「うーん、そうだね。あれは『コン』って感じかな」
……すると風呂の方から「ふー」とか「うー」とか声が聞こえてくる。
まあいいか、この話は。
それより、ちゃんと洗ってから
一応、お湯の
「瓜生先生、この
「うん? ……ああ、そうだね。これが吉と出るか凶と出るか分からないけど」
「こうまで関わり合ったら、もうどのみち隠しておくことは出来ませんよ」
「確かに」
お客さんたちにお風呂を楽しんでもらった後は、夕食を食べながら今回のメインと言えるイベントを行う。
――それは「情報
具体的には、俺たちの持つスマホに保存されている様々なデータ――
俺たちの住んでいた世界、文化をエレディールの人々に知ってもらう――これは即ち、俺たちの正体と価値を知らしめるってことを意味する。
……これを言い出したのは、俺だ。
当然のことながら、結構な反発を食らった。
要するに、手の
この気持ちは、俺にもよく分かる。
確かに俺たちの持つ知識や技能は、ある意味切り札でもある。
それを開示してしまうことで、危うい
でも、忘れちゃいけない一番大事なことは、「元の世界に戻る」という俺たちの大目標なのだ。
俺たちが違う
犬のおまわりさんに出てくる
――大体、もう
それに、向こうだって俺たちの正体についていろいろ考えて、当たりを付けてるんじゃないかな。
その答え合わせをしてやるんだから、驚きはされても納得感の方が大きいように思う。
「りょーすき!」
「……ん?」
職員玄関の方から、手を
あの男とはもう何回顔を合わせているのか分からないくらいなので、相当気安くなってきている。
……ちょうどいいタイミングで、風呂の建物――
――Tシャツに短パン姿で。
お貴族様のこんな
着替えとか持ってきてるだろうとは思ったけど、一応
それにしても……貴族のくせに、意外と似合ってるな。
ま、俺たち学校勢も午後八時くらいから交代で入る予定だ。
楽しみにしとこう。
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