第五章 第20話 一日目を終えて その2
ザハド御
疲労
そこに
そして再び、職員室の扉が開いた。
☆
ガララ。
「あ、いた。瓜生先生、
と言いながら、
「お疲れ様。上野原さん」
「どうしたの、上野原さん。眠れないとか?」
「いえ、眠いと言えば眠いんですが、上からグラウンド見たら何か
「不用意に近づくと警戒されるよ。ほら、見張りも立ててるみたいだしさ」
「う……そっかも知れませんね」
そう言って、俺の隣りにちんまりと座った。
「あれ、寝ないの?」
「んー……せっかく
……よく分からん理由だけど、まあいいか。
俺たちの会話を聞いていた瓜生先生が、
「上野原さん、料理の方で大活躍だったんだって? 花園先生たちから聞いたよ」
「えっ、そうなんだ」
「い、いえ……そんな大したことでは……」
「あれでしょ? あの
……マジか。
「あのトマトソースみたいのがかかってたやつ? きしめんみたいな?」
「まあ、はい。って言うか、タリアテッレって言うんですよ。きしめんじゃないですから」
LEDの光に照らされてる彼女の顔は、照れてるのかむくれてるのか……でも、何か嬉しそうな気持ちが伝わってくる感じがする。
「そっか。タリア……も美味しかったけど、アイスもよかったよ。
「ありがとうございます。でも、パスタもアイスクリームも作り方はそんなに難しくないんですよ。花園先生や不破先生もご
どういうわけか、
「八乙女先生たちが、ザハドでしたっけ? 町の偉い人たちと交渉して、小麦粉やミルクやタマゴが手に入るようにしてくれたお
「ああ、そうか。ん~でも、運が良かったってのもあるんだよなあ」
……ちなみに、職員室の冷蔵庫は最初期から
二台あるポータブル電源と太陽光発電パネルで、必要な電力は
――ガラララ。
「あ、やっぱりいたー」
「何してるんですかー?」
何だよ、やたら集まってくるな。
「
「お疲れ様ー、上野原さん」
「お疲れ様」
二人の手には、しっかりマグカップが
ダベる気満々か。
「ほら、二人ともここ座りなよ。僕はそこのパイプ
「えっ、いえいいですって。私がパイプ椅子を」
「いいからいいから」
瓜生先生はさっさと立ち上がって席を
「すみません、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
二人はしばらくもじもじしていたが、お互い
「さすが瓜生先生、紳士ですねー」
そう言いながら上野原さんが
何だっつーの。
俺にそういうイケメンムーブを求められても困るんだが。
大体さっきの状態で俺が席を空けたところで、おひとり様用のスペースが一つずつ、向かい合わせに出来るだけじゃんか。
そう反論したら「そういう問題じゃないんですよ……」と
山吹先生と黒瀬先生は、
「そりゃそうと、どうしたの? 二人とも」
面倒な流れにならない内に、話題を変える。
「何か下の方から、ぼそぼそと話し声が聞こえてきたから、様子を見に来たんですよ」
黒瀬先生が答える。
「えー? 聞こえた? 二階で?」
「しーんとしてると、結構
「窓なんかもう、ずっと開けっ放しですもんね」
そういうもんなのか。
「八乙女さん、接待
「ありがとう。でもホントに疲れたよ。あの人たち、こっちのペースなんかお構いなしに
「リィナとシーラも、眼を
ドアと言うドアは一つ残らず
「校舎北を案内した時も、リアクションがすごくなかった?」
山吹先生の言う通りだが、俺としてはその前に、スリッパのまま外に出ようとするのを
当然のことながら、最初に校舎に入る時もそのまんま
――ところで、裏の駐車場に止めてある車は、普段使い?してる俺と教頭先生の
前にガソリンを全部抜いて、俺たちの車と瓜生先生のバイクに集約して使おうということにはなったけど、万が一の事故や故障した時の
それに、車の持ち主としてはやっぱり、ただ
その気持ちはよく分かる。
「車に対してもそうだったけど、アスファルトにも興味を示してたね」
「あとバイクにもね。動かしてみて欲しいって言うから、瓜生先生に来てもらったら先生ったら調子に乗っちゃって」
山吹先生は笑って言うけど、バイクを見た時のあの人たちの食いつきがホントにすごかったのだ。
そこに瓜生先生がウオンウオン吹かして駐車場をぐるぐる走るもんだから、リューグラムさんとかおじいちゃん――リンデルワールさんとか興奮しちゃって、大変だった。
「お
やれやれって顔してるけど、自業自得ですからね、瓜生先生。
「明日は明日で、朝から晩まで盛りだくさんよね。ねえ、八乙女さん」
涼しい顔で言う黒瀬先生。
うっ……。
「そう言えば、準備は大丈夫なんですか? 八乙女さん?」
「だ、大丈夫さ……大丈夫。練習頑張ったし。それより山吹先生だって出番あるでしょ? 大丈夫なの?」
「私ですか? 私はもちろん平気です」
一日目の今日は、学校の施設とか備品とかの、いわゆるハードウェア的なところを案内したわけだが、二日目の明日は、ソフト面というか文化的なあれこれをお見せしようという計画なのだ。
「だって、楽譜とかないんでしょ?」
「ありませんよ。自分の
「え、ウソでしょ?」
「本当です。記憶してると言うより、指が覚えてるって感じですけどね。明日の
はえー……確かに演奏動画とかだと、
いやそれでも、練習した曲をほとんど
「八乙女さんが怪我しないかってのもちょっと心配だけどさ、あれ、マジでやるの?」
瓜生先生が真面目な顔で聞いてくる。
八「あれって……外でやるあれですか?」
瓜「そう」
黒「
山「先方には、ちゃんと了解を取ってありますよ。ラインも引いてありますし」
上「何て説明したんですか?」
山「
そんな感じで、さっき黒瀬先生が言ったみたいに、明日は本当に朝からこれでもかってくらい、いろんなイベントというかアクティビティというか、とにかく
異文化交流とか、それに
でも俺は正直、学習発表会――本校だと
何と言うか……久しぶりに、教師っぽいことをしてる気がするのだ。
それに――明日は長い間待ちに待った、
――その
そして、もうあと
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