第五章 第14話 報告会 その1
「では、第二回目の魔法班班会議を始めます」
前回と同様、六年二組の教室に
リッカ先生のレッスンに参加した五人は、俺の左側に
――俺たちザハド訪問の第二陣は、昨日無事に帰宅……ではなく、帰校した。
前回同様、たくさんのお土産と、確かな成果と共に。
出張?期間が割と短かったからか、事故とかアクシデントとか、そういうものには特に見舞われなかったし、今回も大成功と言っていいんじゃないだろうか。
ただ一つ……ちょっと気になるのは
二日目の夕方にリィナの宿屋で待ち合わせたところ、ずいぶんと先に到着していたみたいで、俺たちが合流した時にはもう相当に出来上がっていた。
会話にもロクに参加せず、何やらぶつぶつと
あんな久我さんは初めて見た気がする。
とは言っても、アルコールが入ればガラッと
問題なのは、翌日になってもぼーっとしてるところ。
帰りの馬車の中でも、不破先生によれば「何かやたらとザハドの町の方を
単独行動をしている時に、もしかしたら何かあったんだろうか。
機会があったら聞いてみようと思う。
その教頭先生と不破先生は二日目、ドルシラ……もとい、シーラと彼女の友達十人くらいに連れられて、
「何だか遠足の
――ま、それはともかく。
「まず、
実は、俺たちのうちの三人が
昨日帰ってきた
ただね……報告するの、百パーの笑顔で出来ないところが気が重いと言うか、切り出しにくいと言うかね。
これってあの「いいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」ってやつなんだよ。
でも当然、伝えないわけにはいかない。
俺はひと息に言い切ることにした。
「結論から言うと、俺たちも魔法は使えます。ですが、もしかしたら使える人と使えない人がいるのかも知れません。その違いについてはまだ何も分かっていません」
いきなりざわつくメンバーたち。
加藤先生と天方君は俺の右に座っているけど、どんな顔をしているんだろう。
確かめる勇気がない。
「
「もちろんです」
俺は
「まず俺たちは、リッカさんと言う人に魔法の使い方について教わりました。セラウィス・ユーレジアというところで働いている人です。言葉の関係で説明を理解するのはなかなか大変でしたが、結局のところ彼女が伝えたかったことは、
俺は、用意してあったトイレットペーパーのロールを目の前の床に置いた。
昨日のうちに
黒瀬先生にはすごく変な顔をされたけど、「明日の会議で使うから」と言って借りた。
――で、その黒瀬先生と
そりゃあ俺だって、もっと
でも、リッカ先生が使っていたような
まあ、リッカ先生は転がすと言うより吹っ飛ばしてたから、
「フォーレス」
俺はまず、自分の
ゆっくりと指を下げていき、胸のところに
「スタウト」
そう
ころころころころろろろろ……――――。
トイペは五十センチほどゆっくりと転がってから、止まった。
「おおおおおおおお!」
ふう……昨日から練習した
既に何人かは、今見せた一連の動きを真似し始めている。
「ちょ、すごいじゃんせんせー! どうやったの?」
「まじすか……」
「く……何かのトリックじゃないんですかね?」
「八乙女先生、もう一回見せてください」
「いいですよ。それじゃあ……」
「先生、今度は僕がやります」
俺の左側にいた
俺は
「よし、じゃ、どうぞ」
すると、彼は仕草こそ俺と同じだが、黙ったまま指を動かし、手の平を
ころころころころろろ……――――。
「おおおおおお!」
「
再び上がるどよめき。
「俺が考えるに、要点は二つだけのようです。まずは起こしたいと思う現象を、出来るだけ正確に、はっきりくっきりと具体的なイメージとして思い浮かべます。そして、そのイメージを胸のところに移動させる感じで持ってきて、胸から放出するように念じるんです」
「胸、ですか?」
山吹先生が
「はい。でも
「さっき、神代君は呪文?みたいのを
今度は瓜生先生だ。
「恐らくですが……呪文は必要ありません。リィナもペルオーラも、リッカ先生も黙ったまま
ここで俺は、とっておきの隠し玉を
ちょうど車座の中心くらいのところに移動していたトイレットペーパーを、ひと
「ええええええええええええ!?」
「す、すごい……」
「どうなってんの……?」
周囲の熱量が高まるほどに、自分の心がひんやりとしてくのを感じる。
……すごいすごいと言われても、とてもじゃないが素直に喜べないのだ。
両肩にずん、と
ちなみに、周りには
脳内詠唱すらなしでも試したが、まだ上手くいかなかったのだ。
「八乙女さん」
しばらくして、瓜生先生が問い掛けてきた。
「前回ザハドに行ったみんなが見たのは、
そうですね、と俺は答えた。
「火を点ける魔法は、万が一のことを考えてまだ試していません。今お見せした、何て言うか超能力っぽいやつは、単にリッカ先生が教えてくれたものをそのままなぞっているだけで、多分ですが初心者がイメージし
「なるほど……」
「でも、きっと本質的にと言うか、やることは変わらないと思いますよ」
「あのう……」
秋月先生がおずおずと手を挙げた。
「私、ずっと気になってるんですけど、八乙女先生、最初に『使える人と使えない人がいるかも』って言ってましたよね?」
「あ、はい」
――来てしまったか、この質問が。
実際のところ、まだそうと決まったわけじゃあない。
例えば英会話みたいに、ある程度のところまでは努力次第で誰にでも……って可能性がないわけでもない。
だけど……それを言って
何と説明すべきか、いい考えが思い浮かばず、おろおろしていると――
「――えーっと、私からいいでしょうか」
加藤先生が手を挙げた。
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