第五章 第07話 ギームをめぐって その2
ザハドで
俺――
しかし、留守番していた人たちには海の物とも山の物ともつかない――と言うか、はっきり言えば
ならばまずは同好の士でやろう、と言うことで俺は魔法班というものを立ち上げる許可をもらった。
最初の班会議で
☆
「――という感じでした。
「
説明を終わって、むふーという感じで座り直す山吹先生。
「はい」
早速、手を挙げたのは
「
「どう、とは?」
「えと、例えばかざした手のひらから炎がぼーっと出た、とか」
俺と山吹先生は思わず顔を見合わせた――火なんか出てなかったと思うけど、どうだったっけ?
「はい、じゃあ私が」
「私が見た限りでは、ペルオーラさんもサブリナさんも、直接炎を出したりはしてませんでしたよ。こう、手をかざし続けているうちに、
「その時、何か
加藤先生が
興味
黒瀬先生は視線をちょっと上に向けてから、
「いえ、特に何か口にしていたようには――要するに呪文……ってことですよね?」
「そうですね。『薪よ、燃えろ』とか『我、
「怖い!」
突然地を
小学生男子二人もびっくりした顔をしている。
「焼灼って……
黒瀬先生も苦笑いだ。
……面白いな、
「それなら単純に『ファイヤー!』とかは?」
何も
……まあ気持ちは分かる。
呪文とか、はっきり言ってロマンでしかない。
「いやいや、ファイヤーって英語でしょ? 英語
「いや、分かりませんよ?」
「もしかしたらこの世界は、元いた世界の数千年先の未来で、言語は
「……すごいな、加藤さん」
瓜生先生が、心底感心したという表情をしている――嫌味とかじゃなさそうだ。
「そういう発想が出来るのは、素直にすごいね。僕にはなかなか……」
「えへへ、そうですか?」
「はい」
お、
何か珍しい気がする。
「どうぞ、秋月先生」
「
ふむ、なかなか鋭い質問だが……どうだっけ?
ザハドに同行した面々を見渡すと、他の三人が首を
ん? ……天井? ……蛍光灯……照明――お、そうだ。
ナイスだ、瑠奈。
「そう言えば、それらしいのがもう一つありました。
「ん? そんなのあったっけ……?」
芽衣が
「セラウィス・ユーレジアにいた時……あ、セラウィス・ユーレジアって正確な意味はまだ分からないんですけど、俺たちが泊まっていたでかいお屋敷のことです。中に学校みたいなのがあったりメイドさんがいたりと、不思議な場所でした」
「メイドさん……?」
加藤先生の眼が……怖い。
何か言いたそうだけど、取り敢えず無視しとこ。
「そこでそれぞれ部屋をあてがわれたんですけどね、その部屋の照明が
「それ、確かめたんすか?」
「部屋の中の、
「周りのガラス部分そのものが光っているようにしか見えないんですよ。あ、空っぽって言いましたけど、
「……
またしても加藤先生が反応する。
この人ヤバいな……。
まあ……確かに魔石も最近のファンタジーだと定番だしね。
それにしても、光魔法ってよく考えると何だ?
「石っぽい……かな。いや、本当に小さかったんですよ。
「うーん、確かにそれも僕たちが知ってる技術体系の
「それより、電気は通っていなかったんですか? 照明なら電気の方が向いてそうですが」
「それがですね」
秋月先生からの再度の質問に、俺は再び答える。
「ザハドにいる時にもみんなで話したんですけど、電気が使われている
「まず前提として、この世界に電気がないわけじゃないよね。もし電気がなければ、物質は今あるようには存在できない。神経がある僕たちが生きていることがそもそも、電気そのものがある証拠だから」
「大体、ここでだって太陽光発電してるっすからね」
瓜生先生と諏訪さんの言う通りだ。
だから、まだ発見されていないか、静電気や
……いや、
「えーっと、話がこの地の文明レベルに及んで、若干
議論の軌道修正を
「一番の
「ちなみに、皆さんご存知だとは思いますが、ザハドに行ったメンバーは全員
山吹先生が補足してくれたように、問題はそこなのだ。
なぜ俺たちに出来なくて、ペルオーラやサブリナには出来るのか。
「そのことについて、俺たちと彼らでは見た目は同じでも、中身は違う生物なのかも知れないなんて仮説も出ました」
「それはつまり、あれでしょうか」
加藤先生が再び食いつく。
「例えばデンキウナギやシビレエイに発電器官があるように、その、サブリナさんたちにも『魔力器官』のようなものが、あると?」
「うーん……いやまあ、サブリナたちが違う生物かもってのは単なる自分の仮説ですし、彼らが
「はい! はい!」
「芽衣さん、どうぞ」
何か思いついたらしく、芽衣が勢いよく手を挙げている。
「あたしが読んだ
「精霊……か」
いよいよファンタジーが
「宗教施設っぽいものは確かにあったけど……
「そりゃあたしだって、自分でも半分くらい『精霊とかないだろ……』って思いながら言ってるんですけど!」
芽衣がほっぺたをぷうと
「でも結局のところギームってのが何なのかとか、どうすれば使えるようになるのかとかって、ここで話し合っててもどーにもならないと思うなあ――思います」
すっかりいつもの口調に戻ってるようだけど、確かに芽衣の言うことも正論ではある。
そもそも今日こうして集まりを持ったのも、まずは
ここから一歩進めるには……
「それじゃ、聞きに行きますか」
「
「さんせーい」
――こうして、第二回目のザハド訪問が打診されることになった。
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