第五章 第03話 大晦日 その2
「
「はい、昔よく、お母さ……
人間、どこで何が役に立つか分からないもんだなあ、と思う。
今、職員室はあちこちで
お料理作りで。
私――上野原
私たちの向かい側では、
職員室の机の上は、もう
書類仕事の必要もなくなったし、
「それにしても、餃子の皮と焼売の皮が同じものだって、初めて知りました」
「そうねえ、私も
「本当は形と厚さが違うだけなんだけど、今回は四角くするのが手間だし、違うのは中身だけね」
向かいで作業している如月先生も話に加わってくる。
ちなみに餃子の餡はメルガっていう動物のお肉を細かく切って叩いたひき肉と、リーキに似た太いネギみたいな野菜を
焼売の方で使ってるお肉は同じメルガだけどもっと
「打ち
加藤先生の言う通り今回は片栗粉がないので、生地がくっつかないように小麦粉をまぶして使っている。
「加藤さん、さっきみたいに小麦粉をばふーって、吹き飛ばさないでよ?」
如月先生がにやにやしながら言う。
加藤先生はちゃんと
「やだなあもう、だいじょぶですってば。あ、そう言えば皆さん知ってます?」
「んん?」
「あら、また加藤さんのアレが始まったのかしら」
加藤先生のアレ?
「
「ええ?」
「どういうことですか?」
「えーと、こうしてまず息を全部吐いて……『ゴンディヂワ』ごほごほげほごほ!」
「ちょっと!」
あーあー、また
向かいにいる黒瀬先生に粉がぶっかかってます。
他の先生たちもびっくりして見てるし。
「あ、いや、ごほ、ちょっ、す、すみませぐはっ」
「いいから、落ち着いてからしゃべりなさいよ」
如月先生が加藤先生の背中をさすってる……苦笑いしながら。
しばらく
「いやあこれ、
私には本当にただ
……でも――――だから何? みたいな。
黒瀬先生たちも試してるけど、ホントだって
「ちなみにですねー、この応用で口笛を
「えー、それ本当に吸ってるの?」
「ふ、当然の疑問ですけどね如月先生。もっかい吹いてみますから、私の口の前に手のひらをかざしてみてくださいよ。はい、ぴゅーぴゅーぴゅー」
「あらほんと。息が吹きかかってこない」
……何だろう、吸いながら吹くとか、混乱してるのは私だけかな……。
「ねえねえ、上野原さん」
「はい?」
「加藤先生って、面白いね」
黒瀬先生がそう言って笑いかけてくる。
「面白いって言うか何て言うか……面白いです」
その時、ガラッと職員室のドアが開いて、
「うどん
そう言って室内をぐるっと見
そこではうどんのつゆと具の担当である、
「あれ、
再び餃子を包みだした黒瀬先生が言う。
「うーん、どうなんでしょうね」
確かに、うどん種担当は壬生先生と八乙女先生の二人だったはず。
「それにしても」
黒瀬先生が作業をしながら
「全くの偶然とは言えなあ……あの二人がペアになるとかなあ……」
「黒瀬先生、あの二人って誰のことなんですか?」
私としては何の気なしに聞いたつもりだったんだけど、黒瀬先生は「あ、やべ」みたいな顔をして手を止めた。
「えーっとね、んー、壬生先生と八乙女さんのこと」
「壬生先生と八乙女先生……そのお二人がどうかしたんですか?」
今度こそ黒瀬先生の表情がはっきりと
私の正面では、如月先生と加藤先生が不自然なくらいに
つむじ見えてますよ。
……あ、やべ。
もしかしたらちょっと
私のつむじ……じゃない、うなじが
「あ、ああ、やっぱりいいです。何か空気読めなくてすみません」
「ここじゃちょっとマズいから、後でちゃんと教えてあげるね。関係者かも知れないし」
「は、はい。ありがとうございます」
返事してから気付いた。
関係者って、なに?
実習が始まってからの記憶をざーっと早送りシークしてみたけど、とりあえず思い当たるようなことはない。
何だろ……こんなアンタッチャブルっぽい話の関係者とか、不安しかないぞ。
……こっそり壬生先生の方を見る。
ラップの
あれって
ふと窓の向こうを見ると、八乙女先生の歩く姿が見えた。
外では校長先生たちが焼肉とか
何だか私もお手伝いに行きたく……いやいや、何を言ってる私。
どうにも不安な気持ちを
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