第四章 第19話 ザハド訪問四日目 その2
そして今、俺たちはまた馬車に揺られている。
目的地だったイストークの町を
同乗しているメンツも、
――塩鉱山ザモニスの
今も
昔どこかの観光地で見た
――素晴らしい景色を楽しんだ俺たちは、お
お土産とはもちろん、岩塩だ。
食料としてもらったものもたくさんあるが、人を
そもそも、俺たちは塩を調味料として認識しているけど、岩塩は鉱物の一種なんだよね。
料理に
――ちなみに、お土産は次の目的地であるイストークでもかなりの量を用意してくれており、さらには東の森の入り口への
ちなみに「東の森」と言ったが、ここらの人たちは俺たちがそう呼んでいる森を「
この森はザハドから見れば西側にあるわけだから、方角で呼べばそうなるのは
――で、次に向かったイストークだが、どうやらこの辺りの
穀物ばかりでなく牧畜も盛んで、食肉や乳製品、各種野菜の一大産地でもあるとのこと。
――到着してまず目を引いたのは、見渡す限り一面に広がる小麦畑だった。
と言っても、
ちょうどお昼時だったので、町内のとある食堂で昼食を取ることになった。
出てきたものは、最近セラウィス・ユーレジアでの食事でお
実際「
こっちに来て、確かにバリエーションに少々
――それでふと思ったのは、ここの人たちは当たり前のように一日三回食べている、ということ。
古代ギリシャとか古代ローマもそうだったとは聞くけど、つい最近までは仕事に行く前に食べて帰って来てから食べる、みたいな一日二食も多かったそうなんだよね。
まあ食事事情って
そう言う意味で、ここの社会は結構成熟してきているんじゃないかなと……まあ生活そのものは
――で、ちょっと不思議に思ったことがある。
日本で読んでいたファンタジー系のマンガや小説に出てくる村や町ってのは、多分そのほとんどが
古代中国の
今でいう空港の
それって要するに敵軍とか魔物、不審者とかの侵入を防ぐものだよね。
だけど……ザハドにしろイストークにしろ、そうしたものが設置されている様子がない。
もちろん、農業用のものは見たし、セラウィス・ユーレジアみたいな重要施設は
いやまあ、今のところこの二つしか知らないから、もしかしたら他のところにはあるのかも知れないけど、これは一体どういうことなのかなって考えてしまったのだ。
……ないということは、必要ないからだ。
日本ばかりじゃなくて、恐らく海外のほとんどの
要するに、外敵の侵入の心配がない社会なわけで、それはつまり、この世界もそういうことなのだ。
こんなことを、校長先生たちとちょっと議論したりしたわけだ。
――
そんなこんなで町長さんたちの案内で、俺たちが提供してもらう予定の農作物や食肉の生産元を見たり、
帰路と言ってもこれから向かう先は、今のところの
プル・ファグナピュロスという宿屋だそうだけど、屋号にはどんな意味があるんだろうか。
とにかく俺たちを一晩でも泊めたいと、サブリナがリューグラムさんに頼み込んだとか。
……あれか、あの何か必死にやり取りしてた時のことかな? 初日の会食の時の。
「八乙女さん」
ゆっくりと流れる景色を静かに
ちなみに
眠っているのかどうかは分からない。
確実に寝てるのは、俺の横に座っているサブリナだ。
ザモニスでもイストークでも、この子は張り切って案内してくれたり通訳に
馬車に乗ってものの数分で、静かな寝息を立て始めた。
俺はそんな
「はい」
「ちょっと教えてもらいたいのですが」
「何でしょうか?」
「くじのかね……と言うのが何時を指すのか、分かりますか?」
「くじのかね、ですか」
俺はちょっと考え込む。
この地の時刻制度は、一応理解したつもりだ。
午前六時を始まりとして、二時間がひとまとまりの十二個に一日を分けている。
つまり、俺たちにとっての午前六時は「一時」となるわけだ。
なかなかにややこしいが、ここの人たちにはこれが普通なんだ。
で、「二時」は二時間後の午前八時を示す。
つまり……
「午前六時が一時ですから、そこから二時間ごとに数えると、「九時」は俺たちで言うところの午後十時ですね」
「午後十時……ですか」
……何だろう。
校長先生の目は相変わらず
この人は俺の知る限り、話す相手とは視線を合わせるタイプのはずなんだが。
何となく引っ掛かりを
「その午後十時が、どうかしたんですか?」
「……いえ」
しばらく沈黙した後、
「ちょっと知りたかっただけです。相変わらずこっちの鐘を鳴らすシステムが分からないままですから」
と言って、初めて俺を見て笑った。
「はあ、そうですか……」
この後、車内ではサブリナが目覚めるまで誰一人
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