第四章 第17話 ザハド訪問三日目 その2
――
大きいのが六回、小さいのが一度。
物語の中でしか聞いたことのないような、西洋風の鐘の
私――
散歩をしているのだが、あまり離れてはいけないということなので、もう何度か通った屋敷の周囲の道をまたこうして歩いている。
見上げれば、
見知った空の色のはずなのに、その下に広がる町並みは異国のそれ……。
今更ながら、ちぐはぐな感が
新鮮な景色ではあるが、こうして一人で
――昼の会食には、リンデルワール
リューグラム卿よりも、三つほど
――会食そのものは、スムーズに進んだと思う。
リンデルワール卿は、この地に来て出会った者の中で、最も年長であるように見えた。
私と同じか、多少上なのか。
この会食は表向き、単なる
しかし校長でありリーダーでもある私自身は……ただ料理を食べ、酒を飲んで、適当に
実質的な
それを申し訳なく思う気持ちはあるが、同時にそれでいいと断じる自分もいる。
実務的にお飾りでも
――自分は責任を取るためのリーダーなのだから。
その八乙女さん、どうやらあまり体調がよくないらしい。
昨日、広場で串肉を
今は回復して、恐らく町のどこかを見て回っているようだから、心配はいらないと思うが……。
――昼の会食以降は、各自自由行動ということになった。
私はこの通り、屋敷周辺を散策しているし、鏡さんも同じらしい。
女性陣だけは、サブリナたちの案内で近くの湖を見に出掛けていると聞いた。
直接話したことは数える程しかなくても、サブリナやドルシラたちがしっかりした子たちであることは
しかし、聞けば彼女たちはまだ十一歳とのこと。
そんな子どもたちに負担をかけてしまっている状況は、何とかしていかなくてはなるまい。
――と、後ろから声がした。
「ノァメルード」
振り向くと、まだ幼い子どもが立っている。
そして
「スクリープ、フォルタウ」
弱ったな……言葉がまるで分からない。
思わず受け取ってしまったが、これは――手紙だろうか。
表にはご
普通は
裏返してみると、
――もしかしてこれは、
もしそうなら、何とも
「ちょっと――――」
と声を掛けた時には、その少年の姿は
……遠ざかる足音が
私は、考える。
このような異世界じみた場所で、誰かから手紙をもらうということを……どのように受け止めたらいいのだろうか、と。
ペーパーナイフなどないので、フラップを引っ張って
――どうやらこれは封筒ではなく、手紙そのものを折りたたんだもののようだ。
――――……?
そこに書かれていた文章に、私は首を
……これは――
「やあ、校長先生」
いつの間にか屋敷の門の近くまで歩いてきていたらしい。
私が来た方と反対側から、
「やあ鏡さん、散歩は終わりですか?」
「ええ、ここはいろいろと興味深いところですな……ところで、どうかされましたか?」
「どうか、とは?」
「いや、何だか青い顔をして立ってらしたようなので」
「青い……いえ、きっと光の加減でしょう。こんな夕暮れですから」
「そうですか」
鏡さんは特にそれ以上追求しようとせず、屋敷に向かって歩き出した。
「我々もそろそろ戻るとしますか。ここの食事は名も知らぬ異国のものですが、なかなかに美味い。そう思いませんか?」
「
私は鏡さんの後に続いた。
手紙の内容を
◇
そして同日、そろそろ
「少し勇み足だったのではないか?」
「申し訳ございません。まさかあのような」
「ふむ。まあこれも一つの情報ではあるか……その
「いえ、あと
「……そうか。分かった。だが、今後はより慎重に
「は。改めて周知いたします」
――配下が出て行った
「二人だけとは、一体……」
――――――――――――――――――
2023-01-28 一部誤表記を修正しました。
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