第三章 第19話 袋の中身

「それで、これらが今回の収穫というわけですか……」


 校長先生が、なか呆然ぼうぜんつぶやいた。


 ここは職員室。

 時計を見ると、午後五時半ちょい過ぎを指している。


 俺たちが森から運んできた袋を、みんなで囲んでいるところだ。


 細かい報告は後でするつもりでいたが、手のいた人たちには集まってもらって、とりあえずの朗報ろうほうを伝えたいと思ったのだ。


五袋ごふくろあるうち、三つは恐らく……これ小麦粉ですよね?」


 袋の一つに、小さく切り込みが入っていて、そこから黄色っぽい粉がのぞいている。


「小麦粉ってもっと白いと思ったけど、光の加減かしら」


 如月きさらぎ先生がしゃがんで、まじまじと見つめている。


「元々の色はこんな感じなのよ。でもこれ、強力粉きょうりきこ薄力粉はくりきこかで、作りやすいものが変わってくるわね」


 花園はなぞの先生はそう言うと、袋の中の粉に指にちょっとつけて、ぺろっとやった。


めただけじゃ、分からないわ」


 俺は別の袋をゆびさす。


「それでこっちが、岩塩がんえんです。ピンク色のやつですね」


「へー、結構大きなかたまりも入ってますね」


 と言うのは、久我くが純一じゅんいちさん。


「ねえねえせんせー、ちょびっとだけめてもいいですか? ねえ澪羽みはね

「う、うん」

「いいんじゃない? 試してみたら?」


 と、不破ふわ先生と女子高生二人がやり取りしている。


「で、最後。この袋に入っているのは……生肉なまにくです」

「まあ」


 黒瀬くろせ先生の目が輝く。


 この人、肉をモリモリ食べるんだよね。

 こんなにちっちゃいのに、一体どこに……。


「……何か失礼なこと考えてません?」

「い、いや、ははは」


「これですね、さっき保健室の体重計ではかったら、一袋で三十キロ近くあるんです。八乙女やおとめさんと僕の二人で運んだんですけど、どうりで重いはずですよ」


「重さもそうだが」


 かがみ先生が、腕を組んで難しい顔をしている。


 大方おおかたの女性陣とは対照的な表情だ。


「何よりどうしてこんなにたくさんの食料を入手できたのか、それを知りたい」


 鏡先生が言うことはもっともだ。


 そして、俺も知りたい。


 ――何でこうなった?

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