第三章 第09話 西の森=東の森
転移後、四ヶ月ほどが
「八乙女さーん、行くよー」
「はいはいっと」
俺――
今日も今日とて調査探索。
いつもの出発時刻、午前九時。
俺たち
――何かね、身体がすごく締まってきてるんだよね。
筋肉がついたと言うより、
筋肉と言えば、
カイジ班の男たちは、服の上からでもはっきり分かるくらい上半身がすごいことになってる。
……女性陣のことはよく知らない。見てない。
「何か、あんまり涼しくなってないですよね」
「本当ね」
ちょっと前までは日焼けを気にしてか
実際、秋の終わりとは思えない陽気には違いない。
寒くないのはいいんだけど、今後も冬は来ないままなのかいずれ来るのか、はっきりしないのは何とも歯がゆい。
「でも、あれだね。僕たち結構
「最近、移動に車を使わなくなりましたね」
そう。
瓜生先生の言う通り、以前は森の手前まで車で移動していたのに、いつからか行きから帰りまで徒歩になったのだ。
まあカイジ班の
「上野原さんもヘロヘロにならなくなったしね」
「ヘロヘロって
「八乙女さんだって学校に着くなり死んだように眠ってましたよね」
「いやいや、君たちだって車の中で寝顔を無防備に
女性二人の顔色がさっと変わった。
「!」
「! 山吹先生、今のってセクハラですよね」
「そうね」
勘弁してください……。
◇
すごいなあ、シーラってば。
エリィナさんとは結構離れて歩いているのにに見失わないし、移動も静かだし。
――
エリィナさんはしっかりとした目的地があるのかないのか、時折きょろきょろ辺りを見回しながら、森の
――私たちは見つからないように、かなり
「ねえねえシーラ、エリィナさんの目的地とか、見当つく?」
「うーん、軽装だし
「そう……」
とにかく、ここまで来てしまったんだから、このままついていくしかないよね……。
◇
三キロの道を三十分ほどで歩き、「東の森」の入り口に到着。
「それじゃあ、まあいつもと大体同じだけど、今日の計画を確認します」
隊長からブリーフィングの開始が告げられた。
「まず今日の目的ですが、二つあります。一つは現在六キロメートルほどまで出来ている『森の
この「小径」とかこじゃれた命名は、
草を刈って踏みしめただけの
幸い、この森は平地に広がっているようで、
「二つ目は、出来上がった『小径』から南北五十メートル幅のマッピングです」
この森のマッピング作業には、
さらに言えば「コンタクト出来る存在」探しだ。
彼らが俺たちと同じ人間の姿なのか、ファンタジー小説みたいに
だってあれって、元ネタは北欧神話とかだろ?
少なくともアニメなんかで見るような姿かたちは、近代の作家の創作物なんだから、仮にそういう種族がいたとしても、全然違う
いや……その作家たちがそもそも異世界から転移してきてて、元の世界のことを小説に書いた可能性も……ん~、まあまあぶっ飛んだ想像だと我ながら思うけれど、今の俺たちには否定できないな。
――ま、それはともかく俺たちも何の
何かがいるって根拠は一応、二つほどある。
一つ目は、前に発見した謎の人工物だ。
俺の
人工物なのだから、作った人がいるだろうというのがその
「あと、
そう言いながら、
同じものが上野原さんと
獲物にとどめをさすためのもの。
いずれも瓜生先生の手になる、イチイの
「私たちは今のところ成果が出てないけど、瓜生さんは
「練習は結構してるんですけど、いざ本番となると……」
人がいるだろうという、第二の根拠がこれなのだ。
普通は
矢があるということは――当然誰かが弓を使ってそれを
で、弓を引く人がいるのなら恐らくだが、その「彼」もしくは「彼女」は人間と同じような体格骨格をしているのではないだろうか、と。
「何か質問、ありますか? なければとりあえず森に入ります」
「ありません」
「ないです」
「ないです。行きましょう」
ということで、俺たちは森に足を踏み入れ、既に何十度目かに及んでいる東の森の探索を始めたのだった。
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