第三章 第04話 食料調達
俺が
学校から見て東にあるから、東の森。
分かりやすいだろ?
ここは例の、水源となる川を発見したところだ。
カイジ班は毎日、学校まで約3kmの水路を通すべく
とにかく
その
あとは学校側の必要とされる各所に水を配れる
――「のみ」と言うには多い気もするが、まあカイジ班のことはさておいて、今はうちの話だ。
今日は
目的は、
俺たちの
周囲に広がる草原もこの森も、もう探索し始めて大分
と言うのも、今のところあくまで外見とかからの判断ではあるが「これってあれかな~」みたいなものが結構あるのだ。
こんなところも、ここが地球のどこかだって考える根拠になるんだよね。
俺も個人的にはそれなりに植物を知ってはいるが、花園先生にはちょっと
何しろ彼女は理科部会の夏季研修で、フィールドワークの講師を
◇
「ねえねえ
「ああ、ちょっと可愛い感じの葉っぱとか、実の色も大きさもそれっぽいかも……」
「あ、私、コケモモのジュース飲んだことあります」
「結構
これは
「お砂糖入れてジャムにしたいけど……どのくらい残ってましたっけ、お砂糖」
「うーん、調味料は全体的に少ないから、
「でも、ビタミン不足に備えて作っておいた方がいいかも知れませんね」
と、椎奈先生。
◇
「ねえねえちょっとあれ、イチイのように見えるけど」
「確かに、この穴の開いた
「実は食べられるわよ。それ以外の部分はアウト」
「あ、イチイですか? どれどれ」
急に
「これ、弓の材料として有名だよね?」
「いや、俺は知りませんけど……」
「ほら、動物を狩らないとって話、出てるでしょ? 役に立つかも」
「なるほど」
◇
「あっ、あの赤いの、あの実、なんて木ですか?」
「グミの実ってあんな感じじゃありませんでしたか?」
「確かに似てるけど……グミの実って初夏じゃなかったかなあ」
花園先生が、しげしげと観察して言う。
「グミにも似てるし、アキグミってのもあるからアレだけど、これは多分サンシュユだね」
「サンシュユ?」
みんなの頭の上に、一斉に「
「葉っぱのね、
「なるほど確かに。すごいですねー」
「ただ、あんまりあったかいところの木じゃないように思うんだけどね。でもサンシュユの実なら食べられるから」
◇
とまあ、こんな感じなのだ。
見事に赤い実ばかりが見つかってるけど、目立つからね。
赤い実じゃなくても、サルナシとかクルミとか、ヤマボウシにアケビ、恐らくスダジイっぽい
果実以外でも、野草的なものもいくつか見つけた。
オオバコ、クズ、シソ、ヤマノイモとそのムカゴとか。
「そろそろ時間だ。収穫もなかなかだし、今日はこんなもんでいいだろう。カイジ班もピックアップしなきゃならんしな」
鏡隊長の命令で、俺たちは森の出口に向かった。
◇
「じゃ、運転手よろしくね、八乙女さん」
「了解です」
助手席に乗った
――聞き違いじゃないぜ?
森でがっつり収穫物を得た俺たちは、二台の乗用車に分乗して学校への
もちろん、ここは見渡す限りの草原で、いつもの感覚で車を乗り回せるような場所じゃあない。
どちらも四駆。
あとは瓜生先生のオフロードバイクか。
セ何とかみたいな名前のやつらしいが、俺はバイクのことは全然分からない。
「それじゃ出発しますよー」
「はーい」
俺の車は瓜生隊の四人が乗っている。
教頭先生の方は
俺は西に向かって、ゆっくりとアクセルを踏みこむ。
大分見慣れてはきたが、フロントガラスの向こうの景色はやっぱり
草原と言っても、海みたいにずーっと
ただ、西の方は果てが見えない。
元の世界じゃかつて見たことのなかった地平線というやつが広がっている。
「後ろ、静かですね」
「もう寝てるよ」
ルームミラーには、安らかな
よっぽど疲れていたんだろうが、どっちも寝つきがよすぎるだろ。
とは言え、三キロの距離など時速二十キロメートル
ちなみに転移してきた車の扱いについては、大分前に話し合って決めていた。
持ち主としては当然
「すごい景色ですよね」
「ホントだね。うちの奥さんにも見せてあげたいよ」
「そうですね」
転移してきた車は十台。
ここでも使えそうなのはその内二台とバイク一台。
ならば限りある
ちなみに用途は、今日のように収穫物を得られそうな時の
毎日朝から夕方まで水路づくりに
まあ、小学生もいることだし、校長先生や教頭先生がいてくれるから、無茶なことにはなってないと思うけど。
「お、カイジ班ですね」
「後片付け中かな」
俺は車を止めると、窓を開けて校長先生に話しかける。
「お疲れ様です。すぐに戻ってきますからゆっくり待っててください」
「おー、ありがとう」
近くでは男子二人が大の字で
「後でコケモモジュース(仮)を
後ろの車両から聞こえてくる花園先生の
教頭先生は……しゃっきり立ってる。
――この日に採集した果実や野草は、
まあ時間が
ギリギリのところで
そして、油断はダメだけど、やっぱり俺たち自身も
身も、心も。
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