第二章 第22話 第一回情報委員会 その14
校長室は今、何ともおかしな雰囲気で満たされている。
混乱?
もしくは困惑か?
無理もないけれど。
「そ、それは本当なんですか?
「さあ……あくまで
「それにしたって、ここが本来は太平洋だとか、北マリアナ諸島だとか」
さすがの
「でも同じ星座が見えるってことは、地球なんじゃないの?」
まあそうですよね、
「でも、地図上にはこんな陸地はない、と?」
「はい」
俺の返事に、瓜生先生が続ける。
「ケータイに地図アプリが入ってる
みんなが一斉にケータイを取り出して、操作し始めた。
花園先生は
「まあ!
「し、信じられん……」
「案外、
「近いと言っても、三百キロ以上離れてますね」
「今は
まあ皆さんのリアクションは想定内だが、俺には
激震レベルの揺れだと感じたのにも関わらず、実際は全く揺れていなかったとしか思えない状態。
どう考えても、あれこそ「転移」の原因なわけで、それが何なのかは一切不明なままだ。
◇
しばらくの間、それぞれケータイを操作したりあれこれ議論したりしていたが、
「海なのに陸地があるとか、はっきり言って私には何にも分かりませんけど、ここが地球だって言うのなら、
「いや、地球と決まったわけじゃないですよ、花園さん」
校長先生が指摘する。
「もし地球なら、ここは海のはずなんですから」
ここで、しばらく考え込んでいた教頭先生が口を開いた。
「皆さん、ここがどこだとか、地球なのかどうかとか、確かに気になるトピックではありますが、今は正しい答えを得られそうにないことはひとまず置いておきましょう。とりあえずは現状に即して、私たちの明日からの
「む……確かに」
「
さすがだ……。
この人の
「じゃあ私からいいですかね?」
「調査班は出発する前、ちょっと話したんですよ。その時は『知的生命体』と呼んだんだが、まあそういう
「ジェスチャーとかボディランゲージとか、ダメなんでしょうかね」
花園先生は、どうも接触したい派みたいだな。
好奇心が強いのは悪いことじゃないんだが……。
俺は昨夜、瓜生先生とシャカサインについて話した時のことを思い出しながら言った。
「ジェスチャーって結構危険なんですよ、文化が違うと。有名な話ですけど、ブルガリア辺りじゃ『はい』の時に首を横に振るし、インドだと『分かりました』ってのを首を横にこてんと
「えー、ホント?」
「私が直接経験したわけじゃないですが、実際そうなんだとか」
「ジェスチャーの難しさもそうだし、対応について我々二十三人の総意が固まっとらんこともあったわけですが、とにかく万が一、相手が問答無用で殺しに来るような連中だったら、班員の命に関わってくる。だからそう判断したのです」
「なるほど……。ただ僕としては、校長先生の
「これ、今聞いていいことか分からないんですが、いい機会なので確認しておきたいと思います。皆さん、この地に骨を
しん、と場が
「ここって学校ですよね。毎日毎日
みんな、
「でも、現実を直視してはっきり言えば、ここは『違うところ』なんですよ。少なくとも僕たちが元いた場所じゃない。もしかしたら来た時と同じように、いつの間にか戻れるかも知れないけれど、その時がいつ来るのか。明日か、それとも一年後? 十年後?」
……。
「僕は正直言って、早く帰りたいんです。そんないつ
――ぐすっ……と誰かの鼻をすする音が聞こえてくる。
確かに、待ち人がいる人にとって、よく考えれば絶望的な状況なのだ。
俺は一人暮らしが長かったり結婚したりで、親元を離れていることにすっかり慣れてしまっていたけれど、実家の親父やお袋だって心配はしてると思う。
「もちろん
そう言い切ると、瓜生先生は押し黙ってしまった。
しばらくの間、沈黙が流れた後、校長先生が口を開いた。
「瓜生さんの
「いいんじゃないですかな、つまり大目標は『元の世界に帰る』ってことで」
「賛成です」
「いいと思います」
「それじゃ、具体的な方針を固めないといけませんね」
気が付くと、壁の時計は既に午後十時を回っていた。
それでも会議が終わる様子はなく、更にあと一時間ほど
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2023-01-22 誤表記を修正しました。
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