第二章 第21話 第一回情報委員会 その13
「つまり……これまでの話を総合すると、
「そうらしい……です」
校長先生の言葉に、俺は
あの
森の中で川を発見したこと。
そして――黒い
そのまま気絶してしまったらしい俺はその
そして何と、聞いた話によると意識を失った俺は、どうやら山吹先生と上野原さんの二人に両側から抱きかかえられながら、学校までの長い道のりを運ばれてきたらしいのだ。
二人がかりとは言え、物
もちろん、それを聞いた俺は彼女たちに
「しかもあなた方三人を、
「いや、出迎えてくれたのかは、ちょっと……」
……ん?
「ちょっと聞きたいんだが八乙女さん」
「は、はあ……何でしょうか?」
妙に迫力のある
「山吹さんと上野原さんについては分かるとして、黒瀬さんたちがわざわざ八乙女さんを出迎えた理由に何か心当たりは?」
「いやあの……心当たりと言われても、俺、気絶してましたし――」
「心当たりはない、と?」
「はい……ないですね」
……あれ、何これ?
何? この空気。
何か怪しまれてるのか? 俺。
確かに言われてみれば、黒瀬先生たちの行動はちょっと変だと俺も思う。
まあ黒瀬先生は、養教だからという無理くりな理由付けが出来るかも知れないけれど、女子高生二人や瑠奈さんに関しては、こじつけすら出来ない。
そもそも四人は、俺たち三人の到着をどうやって知ったのだろうか。
きょろきょろする俺をちらりと見て、校長先生が続ける。
「要するに八乙女さんは、六人の女性に囲まれて
「う~む」
……えぇ?
もしかして、吊し上げ食らってんのか? 俺は。
「……けしからんですね」
「けしからんですな」
……はあ?
「な、何がけしからんなんです?」
まさかこういう
俺以外の七人が、しかつめらしい顔をして
ちょっと、黒瀬先生まで! あんた当事者だろ!
どうすりゃいいの? 俺。
――そして約十秒後、
「さて、冗談はさておいて話を進めましょう」
突然、校長先生がクソ真面目な顔で仕切り直した。
「ぷぷっ」
「ふふふっ」
いきなり黒瀬先生と
それに釣られて他の人も笑いだす。
「はははは、
「えぇぇ……」
……ホントに冗談ですか? 校長先生。
顔がマジだったんですけど……。
「わはは、ただひたすらにうらやましいだけだよ」
俺は思わずため息を吐いた。
クソデカため息ってやつだ。
「ちょ……マジで冗談とふんどしはマタにしてくださいよ……」
「出た、追いつめられると出るやつ」
大体、みんなの言いたいことは分かるけど、俺にはその間の記憶が全くないんだって。
気を失ってたんだから。
……それにしてもみんな、こんな状況で俺をイジくるとは、余裕ありすぎじゃないの?
「ま、それはともかく」
やれやれ……ようやく校長先生は先に進めてくれる気になったようだ。
「調査班の報告には、八乙女さんの体調のこと以外に、とても大事な情報が二つあるようですね」
そう言って人差し指を立てる。
「一つ目は、先ほど施設管理維持班から提案させていただいた、水路の件です。三キロメートルというのは、人力で
「確かにあの川の水量水質なら、水を引いてもよさそうでした。地形から考えても、枯れたりすることなく長い間流れ続けてるものだと思います」
俺たちは実際に見てるからね、説得力が違う。
ていうか、急に話が真面目に進みだしたけど……いいんだよな?
「そしてもう一つ」
二本目の指が立つ。
「八乙女さんたちが森の中で発見したというそれが、人工物の可能性が高いということです」
「まあこの世には、
ビスマスの場合は、
「俺が思うにあれは……
それに――――
俺はそこから先を言葉にしたものかどうか迷った。
いや、言葉にするのを
(俺には
「それに?」
鏡先生に
「いえ……人工物でなければあんな風な形にはならないと思います」
「ふむ。つまり、それが意味するところは」
「言わずもがな、です。あれを作った誰かがいるってことですよ。いつのものかまでは分かりませんが」
「それって」
花園先生が興奮気味に言う。
「現地の人に会えるってことかしら」
「
鏡先生が腕を組んで
「どうしたもんですかな。接触するんですか? その現地の人とやらに」
「もしコミュニケートが可能な人たちがいるのだとすれば、
「どうしてですか? 校長先生」
「今後我々が生きていくのに当たって、必要なもの全てを自給自足することは、恐らく無理だからです」
「自給自足か……確かに」
「特に、なるはやで解決しなければならないのが、塩です」
「あ、そうそう、そうなんです」
突然、不破先生が声を上げた。
「今日物資のチェックをして分かったんですけど、備蓄品の中に調味料の
「え、それだけですか?」
びっくりして思わず聞き返してしまった。
「そう。それだけ。ただお
「と言っても」
不破先生の言葉を
「アルファ米とかクラッカーとかに十分な量が元から含まれているから、塩そのものが必要になる場面は当面はないわねえ」
「それでも、いつかは尽きる」
瓜生先生が重々しく言う。
「だから、塩も含めて何らかの形で取引できるような体制が必要なんですが……」
「だったら、
「花園さん、もちろん私としてもそうしたいのは山々なんですけれどね……ここがどこか分からないんですよ」
「どこって、国がかしら?」
校長先生と花園先生の会話を聞いて、俺は思わず瓜生先生の顔を見てしまった。
目が合った。
どうやら向こうも同じことを考えたらしい。
アゴをくいっくいっとしてる。
何? 俺が言えってことか? はあ……。
「あのう、ちょっといいですか?」
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