第二章 第09話 第一回情報委員会 その1
校長室の時計は、午後八時を示している。
窓の外は当然ながら真っ暗。
人工の光など
で、この部屋――校長室――だが、真ん中にでんとあるでかいテーブルを囲んで、各班の班長副班長計九名が集合している。
九名とは、
テーブルの中央にはLEDランタンが
「では……本日の情報委員会を始めます」
何だか……真っ暗な部屋の真ん中で光を囲みながら、顔を突き合わせて話し合いとか、あれだ。
どっかの
校長先生が妙に
「その前に、八乙女さん。もう大丈夫なんですか?」
「え? あ、はい。もう何とも。ご心配おかけしました」
俺はそう言って軽く頭を下げる。
俺自身にもよく分からないが、いろいろあったのだ。
詳しいことは、あとでうちの班が報告する時にでも説明しようと思う。
そのために俺は飛び入り参加をしたんだからね。
――で、この集まりが何なのかというと、今日作った四つの班のほかに、各班の代表で情報委員会なるものを開くことにしたのだ。
基本的には毎日この時刻午後八時に校長室でってことだが、代表以外でも希望すればだれでも参加できる。
もちろん子どもたちでも、ね。
要するに一日の報告会みたいなものかな。
もちろん報告しあうだけじゃなくて、それを元に活動の改善につなげていく予定である。
「どこからいきましょうかね。まずうちからって人、いますか?」
すると
「それじゃ、私のところからいきましょう。ちょっとアクシデントがあったので、御門
◇◇◇
◇食料物資班編◇
「さてと、じゃあ始めましょうか。最初にさ、もう一回自己紹介しておきませんか?」
そう言うこの人は、確か花園先生って言う人。
うちのお母さんより
何かあたし――
いつもにこにこしていて優しい感じの先生だった。
「言い出しっぺの私からいきます。
そう言ってぺこり。
ここは職員室の
応接コーナーだかスペースとか言ってた。
真ん中にガラステーブルがあって、それを
「それでは次、私ですね。
と、あたしのちょうど向かい――花園先生の隣――に座っていた人が続いて自己紹介をした。
もちろん、この人は不破先生。
あたしと
てか、半分くらいはあたしが澪羽を引っ張ってきた感じなんだけど。
強引にあたしの用事に付き合わせてこんなことになっちゃったから、あの子には申し訳ない気持ちがある。
でも……。
こんな訳の分からないところに連れてこられて、昨日は「もう帰れない」って言葉がやけに悲しくて、澪羽と大泣きしちゃったけど……あの子には悪いけど、帰れないことは今は割とどうでもいいんだ。
あの家に帰らずに済むと思うと。
ここに来たのだってはっきり言うけど、何か特別な用事があったわけじゃなかった。
先週もそう。
ただ、顔を見たかった。
っていうか、いろいろ話を聞いて欲しかったのだ。
「じゃ、じゃあ次は私たちが……」
今度はあたしの横に座っている
「
ぺこ、と二人で頭を下げる。
あー確かに、この子がしゃべってるの見たことない。
昨日会ったばっかりだけど。
みんなの前だと話せないって何だろ。
病気か何かなのかな。
あたしもそうだけど、いろんな人たちがいるんだなあと思う。
「最後に
不破先生がにっこり笑って私を
そうそう、この笑顔なんだよなあ。
先に言っておくと、不破先生は決してあたしに甘いわけじゃない。
厳しいことも言うし、突き放される時だってあった。
でも、
あの人と違って。
もしかしたら、卒業してからもしつこく何度も何度もやってくるあたしを、心の中では
仮にそうだとしても、そんなことはおくびにも出さずに接してくれる不破先生なら、あたしは何も飾ることなくいられる。
あの人と違って。
「
不破先生の表情に特別の変化はない。
ま、全部知ってるしね、この
「まあ、頼もしいわね」
花園先生がにっこりして言う。
「瑠奈さんもどうか力を貸してね。ああ、久我さんだと誰のことか分かりにくいから、瑠奈さんって呼んでいい?」
花園先生に向かって女の子がこくりと首を縦に振る。
「じゃああたしも、瑠奈ちゃんでいいかな?」
女の子がこっちを見る。
髪は前
何と言うか普通の子どもカットって感じだけど、よく似合ってる。
瑠奈ちゃんは、先ほどと同様にこくんと
……何かかわいい。
話せないってことだけど、
「ありがとうね御門さん。瑠奈をよろしくね」
お母さん――英美里さんが瑠奈ちゃんの頭を
……きれいなお母さんだな。
少し茶色が入ったウルフボブって言うのかな。
着てるものもフェミニンな感じで、いかにも優しそうな
「はい。あたしの方こそよろしくお願いします」
「よし。それじゃ、次は仕事についてだね。うちの班の役割は主に二つ。一つはここのメンバーの食
いきなり始まった。
いろいろと書き込む用に、昨日不破先生からもらったノートを開く。
筆記用具も一緒に借りてある。
「すぐにノートを取るのは感心だねえ。この後早速大活躍してもらうことになりそうだけど、頼むね」
そう言って笑う花園先生。
「はい、分かりました」
頼られるのは、嫌いじゃない。
それに……何かこの班、あくまで今のところだけど、空気がいい感じがする。
「食全般って言うのは、作って食べさせるだけじゃなくて、何をいつどのくらい作って出すかって計画を立てること。そして、そのためにどんな食材がどのくらいあるのかってことを、正しく把握する必要があります」
花園先生は続ける。
「いわゆる在庫管理と言うんだろうけど、要はいつもやっている備品整理です。これが二つ目の役割ですね。そして食材ばかりじゃなく、燃料とか機材とか道具とか、今ここにある有用なもの全ての数量と状態を管理します」
そうか。
この
「ただ、職員室や教室の机には先生方の私物が結構入ってますが、それらは管理対象にはしません。昨日
「そう言えば
「ああ、聞いています。この後話すつもりでしたよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます