第二章 第02話 話し合い
二十三名。
ここに
まず管理職の二人。
校長
教頭
次に低学年部担任の五人。
一年一組
一年二組
二年一組
三年一組
三年二組
続いて高学年部担任の六人。
四年一組
四年二組
五年一組
五年二組
六年一組
六年二組
主任は教科主任と主なものだけ。
他にも
次に級外等。二人。
養護教諭
教育実習生
次は児童が三人。
そして保護者二人。
最後に、何て言うか……校外関係者とでも言うのか。三人。
以上だ。
「とりあえずすぐにやらなければならないことは、夕食の準備と寝床の設置、それとトイレについて取り決めることです」
教頭先生が
恐らく校長先生とある程度打ち合わせ済みなのだろう。
「電気・ガス・水道・通信、いわゆるライフラインと呼ばれているものの
まあ、ショッキングではあるけれど当然だろう。
この状況でもし水が
「ただ、不幸中の幸いと言うべきか、校舎北側の災害備蓄倉庫と校長室前の備蓄室は無事です。相当量の物資や機材が確認できました」
ほぅっ……と
備蓄されている物については、後ほど知らせてくれるそうだ。
と言うか、全ての情報をここのいる全員で共有するべきだと教頭先生は話した。
「次に……あまり考えたくないことですが、可能性としてしばらくこの場所で寝起きすることになるかも知れません。数人であれば
先ほどまでの状況確認の段階で、事実として俺たちは草原の真ん中にぽつんと、まるで
ここまで俺を含めて誰一人として口を開かず、黙って教頭先生の話に耳を
言わば、取り乱しまくって疲れただけなのだ。
全員が確認を終えて職員室に戻り、この
如月先生は
確かまだ小さいお子さんがいたよな……。
秋月先生は花園先生に何か
その花園先生も悲しそうな顔で声を上げずに
花園先生は五十
どちらかと言うと
髪型もシニヨンで上品にまとめてある。
秋月先生の背中を優しく
女子高生の二人は、床に座り込んで抱き合って泣いていた。
それを黒瀬先生が
高校生の一人、早見さんは……
左右の耳から上の後ろ髪をひとつにまとめた――ハーフアップと言うのか?――ロングヘアをしている。
遠目にも分かるほどの、
小六の男子は、不安げな顔で何やら二人で話していた。
この子たちは……普通の男の子だ。
女性に比べて説明が雑だと言われそうだけど、小学生男子の髪型を細かな違いにまで言及して説明する教師ってのもアレだと思わないか?
――そう言えば一体何の話をしに来たんだろうな、この子たちは。
あと、男たちだって別に平気だったわけじゃない。
あの自信家っぽい壬生先生は、ケータイで何度も何度もどこかに電話を掛けようとしていた。
どうやっても
この人は……何と形容したもんかな。
あんまりイケメンという言葉は使いたくないんだけど、そんな俺でも他に言葉が見つからないくらい整った顔立ちなんだよな……。
その手の
実際、女子児童がきゃーきゃー言ってるのを見たのは、一度や二度ではない。
まあ本人は
鏡先生も自席で微動だにせず、何かじっと考え込んだままだった。
ある意味、まだましなのが久我家の三人かも知れない。
置かれた状況は最悪でも、少なくとも家族がはぐれることなく一緒にいられるのは、他の人たちが
そうした修羅場をとりあえず
誰もしゃべらないのは異議がないからという理由ばかりではない。
教頭先生もそんな事はとっくに理解していると言うように、そのまま話を続けていく。
「まず一階は、中央の児童用玄関の半分くらいまでが確認できました。この職員室を含め、そこまでの間にある部屋は無事な様子です。職員用トイレ、印刷室、更衣室、防災備蓄室、用具室、校長室、保健室ぐらいですか」
とにかく備蓄室が残っているのは
有り無しで、状況のレベル的に天と地ほどの差がある。
「二階への階段は
「余分な机を音楽室に移した上で、
「……賛成します。女性の方が多いので負担もかかりそうなのが気になりますがね」
鏡先生が
「多分女性十四人で
壬生先生が手を挙げた。
「机を運び入れるのは図書コーナーにして、女性は三-二と音楽室を使った方がいいのでは?」
他の人たちも
特に反対意見はないようだ。
「では、寝床についてはそういうことで。板張りの床はちょっと固そうですが、備蓄品の中にエアーマットがありますので、それを
「はい」
と、黒瀬先生が立ちあがった。
まあ子どももいるから、こうした話は
「先ほど教頭先生が
「えっ」
見ると女子高生の
そうした反応は予期していたようで、黒瀬先生は彼女に視線を向けながら続ける。
「タンクには水が残っていましたので、一、二回なら流せるかも知れません。でも、流れる先は恐らく地面の中で途切れているんじゃないかと思います。私も配管の構造とかは全然理解できていませんが、これは多分詰まっているのと一緒なので、いずれ逆流しちゃいます」
「そ、それじゃあどうすれば……」
「それをこれから説明します。心配しなくても大丈夫ですよ」
「災害備蓄用品の中に、非常用トイレがあります。こちらが小専用で、こちらなら小でも大でも使えます。数日分であればこの人数でも十分な数が
見本として一つずつ持ってきたものを黒瀬先生が
なるほど、使ったものは付属の不透明な袋に入れてゴミ箱ポンでいいらしい。
「使う場所は、やっぱりトイレがいいと思いますから、箱に入れて置いておきます。ゴミ箱も設置しましたので使ったものはそこに入れてください」
「わ、分かりました。がんばります……後で練習させてください」
最後の方は黒瀬先生に小声でしゃべったつもりだろうけど、聞こえてしまった。
こんな時に何だが、妙に
「ただ」
黒瀬先生が表情を引き締めた。
「非常用トイレは差し当たっての数が
「詳しいことは明日以降いろいろ調べてからでいいでしょうが、屋外トイレを作らないとダメでしょうね」
瓜生先生が手を挙げて
「それも含めて、必要な作業を可能な限り書き出した上で、手分けして進めなければならんでしょう」
鏡先生が
「私自身、正直今のこの状況に気持ちが追い付いていません。ですが、どうもただ待ってるだけで事態が
……みんな、
「トイレについてはひとまずよろしいでしょうか?」
教頭先生がみんなの顔をゆっくりと見回す。
声を上げる人はいない。
「では次に、夕食の準備についてです。今日のところはカセットコンロでお湯を沸かして、アルファ米とクラッカーを食べることにしようと考えています」
「あのう……」
「私たちが机の中とかに個人的に持っているお菓子なんかは、どうしたらいいでしょうか。やっぱり差し出した方がいい……ですか?」
う~ん、確かに。
これはなかなかデリケートな問題だろうなあ。
校長先生が立ち上がった。
「ここにある食料については何がどれほどあるのか、備蓄物資も含めて調べたいとは思っていますが」
一旦言葉を切る。
「すぐに
大きく息を吐いてから、校長先生は続ける。
「今日は多分、私も皆さんも普通の状態じゃないでしょう。疲れているし、とにかくいろいろなことがありすぎた……。そんな時にあれもこれも性急に決めるのはよくないように感じるんです」
皆が
「最初に言った通り、今日のところは最低限の事だけでいいんです。難しい話はこれくらいにして、あったかいものを食べて、ゆっくり休んで落ち着きませんか?」
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2023-01-20 一部表記ミスを修正しました。
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